第10章

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「じゃあね、一華ちゃん。」 片手を挙げて、歩いていった。 「…カズマ?」 「ハナちゃん、頼まれたからって、なんでもホイホイ請け負ってたら、倒れちゃうよ?」 「大丈夫だよ。 それに、嫌だと思ったら断る。」 「ほんと?」 「ほんと。 あと、ちょっと嬉しい。」 「?」 「自分を必要とされてるのが。」 「ハーナーちゃん、オレはいつでもハナちゃんが…。」 カズマの口を手のひらで押さえる。 「レンさんとも、話してみたいって思ってたから。 お兄ちゃんもお世話になってるしね?」 「全然、独り占めできない!」 「カズマだって、そうだからね?」 「え?」 「けど、寝癖ついた頭で、ボーッとしてたり、隣で眠ってたり、家でご飯食べてるカズマは、私だけが知ってるって思うから…。」 「ハナちゃん…。」 「なーんて、」 ちょっと恥ずかしくなる。 「うん、そうだね。 よし、帰ろう。 それで、今日も一緒に寝よう?」 「…うん。」 「あ、せっかくだから、お風呂も一緒に…。」 「入りません!!」 「えー!!」 えー、じゃない! そんなことできるわけないよ。 次の日、早速ミユキに事情を話してみた。 「うちの会社、副業禁止にはなってないはずだよ。」 「そうなの?」 「うん。 元々、副業で来てもらってたパートの人とかいるから。」 「そうなんだ。」 「ほら、ちょっと前だけど、谷村さんとか石井さんとか。」 「覚えてる。」 私が入社した頃の先輩で、結婚して退職したけれど、繁忙期に何度かお手伝いに来てもらっていた。 「仕事が休みの日ならいいよ、って言ってくれて、来てもらってたの。 だから、大丈夫だと思うよ。」 「そっか、良かった。」 「それに、商店街のイベントなら、うちの店にもプラスになることだから、店長に話してごらん?」 「わかった。」
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