第1章

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時計を見ると、もう10時を過ぎていて、すっかりのんびりしてしまっている。 こんなにゆったり過ごすの、なんだかいいなぁ。 昨日着ていた服に着替える。 せめてお布団は畳んでおこう。 少しだけ窓を開けて換気をしながら、バサバサ布団を畳んで重ねる。 「ハナちゃん、お待たせ。 って、簡単すぎてごめん。」 「うわぁ! おにぎりだ。」 お盆に、おにぎりとおみそ汁とお漬け物が乗っている。 「召し上がれ?」 「いただきまぁす! …おいしい。」 「良かった。」 「幸せだなぁ…。」 「それ、ホント?」 「うん。」 「ハナちゃんをずっと幸せにしたい。」 「な、なに言ってんの!」 むせそうになって、慌ててお茶を飲む。 胸をトントン叩きながら、なんとか飲みこんだ。 「帰したくないよ。」 「カズマって、意外とさみしがり屋さんだね。」 「うん。 ハナちゃんに会えないのは、嫌だ。」 「…大丈夫。ちゃんと話す。 話したら、きっとカズマとも話したくなると思う。 だから、待ってて?」 「オレ、ずっと待つよ?」 「ありがと。 あと、私とカズマはなにもないんだから、変に誤解されないようにね。 …って、しないと思うけど。 こっそり帰るから。」 「いいよ、そんなの。」 「良くないよ。」 「ハナちゃん、オレ、」 急にバンとドアが開いた。 「し、翔太?おはよ?」 「おはよう。 刺身食べる?」 長方形のお皿を渡された。 「ありがと。」 「カズマ、醤油忘れた。持ってきて。」 翔太に言われて、カズマが渋々立ち上がった。 「お店は?」 「配達がてら、寄ったんだ。 ゆっくり休めた?」 「うん。 かなりのんびりしちゃってる。」 「それなら、良かった。」 「昨日はありがと。 もう、わかんなくなっちゃってて。」 「無意識に、カズマのとこに来ちゃった?」 翔太はニヤリと口の端をあげた。
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