第10章

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少し緊張したけれど、店長に話したらアッサリOKをもらえた。 と、いうか、後輩たちの中にも、他にも仕事をしている子がいるらしい。 「全然知らなかった。」 休憩室で、ミユキに話す。 「あはは、案外わからないことばかりだよね。」 「うん。」 「それで? レンさんの会社でお兄ちゃんと仕事するんだ?」 「面白がってるでしょ。」 「多少。」 「もう!」 「だって、一華のお兄ちゃん、一華のこと好きすぎて面白いんだもん。」 「はいはい。」 仕事を終えてから、レンさんに電話をしようと思ったのに、ケータイを開くとお兄ちゃんからの着信が何件も入っていた。 「もしも…」 『一華!? 仕事は終わったのか? 今、どこにいる?』 「お店出たところだけど…。」 相変わらずの勢いだ。 『駅前の噴水のところで待てるか?』 「う、うん。」 『すぐ行くから。』 通話を切られた。 仕方ない、駅前に行こう。 お兄ちゃんはどう思うんだろう。 反対、するのかなぁ。 駅前の噴水が見えてくると同時に、お兄ちゃんの姿も見えてきた。 早すぎる。 「一華!」 めちゃくちゃ手を振ってる。 周りにいる人たちが、クスクス笑っている。 「お兄ちゃん! 恥ずかしいからやめてよ。」 「そうか? って、それより、レンから話は聞いた。」 「それなんだけど…。」 「無理はしなくていい。 本業の仕事もあるんだし…。」 「うん、わかってる。 でも、なにができるかわからないけど、やってみたいって思ったの。」 「ツラくなったら、いつでも辞めていいんだからな?」 「それじゃあ、迷惑かかるし、失礼でしょ。」 「だけど…。」 「お兄ちゃんは、反対?」 おそるおそる、顔をのぞきこむと、 「一華と一緒に仕事ができるなんて、夢みたいだよ。」 そう言って笑った。
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