第10章

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「さっそく、事務所にって言いたいんだけど、急な仕事でレンいないんだ。 きちんと時間作ってから、改めて連絡するよ。」 「うん、わかった。 …期待に添えられるかわからないけど。」 「期待してない人に、無理言ってまで声かけたりしないよ。」 お兄ちゃんにくしゃくしゃと頭を撫でられた。 「がんばります。」 「飯でも行かないか?」 「お兄ちゃんは仕事は?」 「今日の分は終わらせてあるから、大丈夫。」 「それなら…。」 「よし。 どこに行く?なに食べたい?」 「お兄ちゃんは?」 「一華の食べたいものが食べたい。」 「もう!」 いつもそんなことばかり言うんだから。 「あそこの店はどうだ?」 また!高そうなレストランを…。 「え、っと。」 「じゃ、決まり。」 肩に手を乗せられて、ぐいっと引き寄せるように歩き始める。 「お兄ちゃんって、いつもこうなの?」 「え?」 「彼女とかいないの?」 「積極的に募集はしてないかな。」 寂しそうにそう答えられると、聞いたことを後悔してしまう。 次々に新しい恋がしたいから、別れたわけじゃないんだろうな。 「仕事も忙しいし、こうして好きな時に一華に会えるから、生活にはものすごく満足してるよ?」 「そうなの?」 「家は快適だし?」 「レンさんって、どんな人なの?」 「…不器用なバカ、かな。」 「え、っと、友だちなんだよね?」 「ははは、友だちだから言えるってことで。」 指差して近づいてたレストランに到着した。 私にも希望を聞いてくれて、お兄ちゃんが注文を済ませたけれど、どうやらコース料理らしい。 慣れた様子で落ち着いているのが、不思議というか、少し悔しいというか…。 「おいしかった…。」 「満足してくれたなら、よかった。」 「大満足です。 ごちそうさま。」
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