第10章

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「家に帰るのか?」 「うん。 今日は早めに休もうかな。」 「じゃあ、送る。 タクシーつかまえようか。」 「大丈夫だよ。 すぐそこだから。」 「疲れてるんじゃないのか?」 「疲れてるっていえば、疲れてるけど、楽しい疲れっていうのかな。 遊びすぎちゃった。」 「そうか。」 「お兄ちゃんは、もう結婚はしないの?」 「…積極的に、したいわけじゃないかな。」 「さっきと同じ…。」 「幸せにしたいと思ったのに、叶わなかった。 今度こそと思ったのに、それもできなかった。」 「…。」 「さすがに、消極的にはなるかな。」 「…。」 「申し訳ないというか、情けないというか…。」 「お兄ちゃんにも、幸せになって欲しいって、私は思ってるよ?」 「ありがとう。」 当事者にしかわからないことがある。 お兄ちゃん’だけ’が悪いのだろうか…。 原因は’悪い’ってだけなのだろうか…。 すれ違いだったり、勘違いや思い違いが原因になることもあるんじゃないかな。 もちろん、努力で解決できることもあるかもしれないけれど、ふとした決断が、取り返しのつかない後悔に繋がることもあるのかもしれない。 「一華、もしなにかあったときには、いつでも頼ってくれていいんだからな?」 「どうしたの?急に。」 「一人で追い詰められることが、心配だから。」 「大丈夫だよ。 それに、私もう大人なんだよ?」 「だけど。」 「今は、カズマと翔太と暮らしてるけど、元々は一人暮らしもしてたんだよ?」 「…。」 「そりゃ、贅沢できるほどの余裕はないとしても、ひとりで暮らせるチカラはあるんだから!」 「うん、わかってる。」 「お兄ちゃんは、心配性だなぁ。」 「そうかもな。」 お兄ちゃんは優しすぎて、心配しすぎてしまうんだろうな。 「ツラい思いなんてしたくないし、そばにいる人にも、そんな思いして欲しくないって思う。」
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