第10章

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「うん。」 「だから、できるだけそうならないように、自分にできることはしたいし、危険を察知できたらいいなぁ、なんて思う。」 「…そうだな。」 「けど、残念だけど、できないんだよね。」 「ああ。」 「だったら、わからない不安で怯えるより、楽しい時間は楽しく過ごしたいなぁ。」 「うん。」 「守れるチカラがあればいいのにね。」 「そうだな。」 「でもね、私も、お兄ちゃんが守りたいって思ってる人もきっと、そんなに弱くないよ!」 「?」 「そりゃ、ちょっと落ち込む日もあるかもしれないけど、そういう時にこうしてお兄ちゃんとご飯食べたら、なんか元気でちゃった、って思うかもしれないよ。」 「…。」 「元気づけようと意気込んでも、それほど効果がないこともあるけど、何気ないことに救われたり元気をもらえることってあるよ?」 「…。」 「変わらない日常に、変わらないご飯のおいしさに、救われることもある!」 「…。」 「罪悪感にとらわれる日があっても、それだけが世界の全てじゃないんじゃないかなぁ。」 「…。」 「って、私は思いたい。 なにがあったかは、本人にしかわからないことだけど、お兄ちゃんが関わってきた人たちは、お兄ちゃんに幸せになってもらいたいって、思ってると思いたい。」 「一華。」 「お兄ちゃんにも、よい出会いがありますように。」 「…ありがとう。」 「って、家に着いちゃった。 お茶でも飲んでいかない?」 「気持ちだけ、ありがたくいただく。 風呂に入って、早く休めよ。」 「うん。 送ってくれてありがとう。 ご飯もごちそうさま。」 「ああ。」 「気を付けて帰ってね。」 「わかったよ。 おやすみ。」 「おやすみ。」 せっかく見送ろうと思ったのに、先に家に入れって言われて、しぶしぶ家に入った。
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