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家に入って、お風呂にお湯を張ろうかとも思ったけれど、待ってる間に眠ってしまいそうで、シャワーを浴びて、部屋に戻る。
部屋にあるドライヤーで髪は乾かしたものの、下に降りてビールでも飲みながら、カズマと翔太の帰りを待とうと思ったのに、どうやら眠ってしまったらしい。
ぼんやり目を覚ました時に、部屋の電気を消して、ぐいっと引き寄せた布団にくるまって、もう一度目を閉じた。
なんだか、懐かしい夢を見た。
制服姿のお兄ちゃんに、私は抱っこされていて、隣にはお兄ちゃんの…友だち?
「一華、可愛いなぁ。」
「アキの娘?」
「ああ、娘。
もう、嫁でもいい。」
「はあ??」
そう言いながら、二人は顔を見合わせて笑っている。
「え…。」
頬を伝う涙で目が覚めた。
悲しいわけじゃないのに、涙が止まらなかった。
アラームよりも早く目が覚めてしまったけれど、これ以上眠る気にもならなくて、部屋を出た。
台所にもさすがに翔太の姿はないけれど、ふわりとおみそ汁の香りが漂う。
何気なくくり返されていることだって、魔法で動いているわけじゃない。
なんだって、人のチカラが使われている。
ご飯を食べて、支度をして、仕事へ向かう。
このくり返しだって、私が健康だからできること。
うん、大事にしたいな。
休憩時間にケータイを見ると、メールが届いている。
お兄ちゃんから、レンさんの伝言だった。
今日か明日の仕事のあと、か。
新しいことを始めるのは、楽しいけれど緊張する。
でもやっぱり、楽しいの方が少し多いかも。
今日大丈夫です、って返信をして休憩を終える。
「一華、ひなまつりのディスプレイの準備ってできてる?」
事務所を通りかかった時に、ミユキに声をかけられた。
「あ、まだ倉庫から出してない!
ごめんなさい、すぐやります…。」
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