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「一華くん、しっかり頼むよ!」
えへんえへんと、わざと咳払いをしながら、一体なにキャラなのか…。
ついでに背中までバシバシ叩かれた。
そのまま、奥の倉庫というか物置として使っている部屋へ向かう。
「あれ?」
ドアが軽く開いている。
「誰かいます~?」
照明もついていて、声をかけてみる。
「あの、去年の資料ってどこにあるかわかりますか?」
棚の陰からひょこっと顔を出したのは、
「小宮?なにしてんの?」
「一華じゃん。」
「なんで来てんの?」
「え?聞いてない?」
ちょっぴり小柄だけど、入社当時よりスーツが似合わなくもない、彼は同期の小宮くん。
「去年の資料、こっちだよ。」
手招きして、棚に向かう。
「4月からここの事務所に移動すんの。」
「え、なんで?」
「ミユキ辞めんでしょ?」
「すぐじゃないよね?」
「いつかハッキリしないけど、辞められてバタバタしないように、会社の考えじゃない?」
「そっか。」
「っつーか、そこで納得すんなって。」
「へ?」
「おれ、店長候補とは思わないわけ?」
パチンと、指でオデコを弾かれた。
「痛んだけど。」
バシッと、肩を叩く。
「一華は婚期逃してんの?」
ニヤリと笑う。
相変わらずだなぁ。
「セクハラです~。」
「は?」
「じゃ、パワハラだ~。」
「はいはい。」
私たちが入社した頃の先輩たちは、結婚や転職やいろいろな理由で辞めていってしまった。
同期で入社した子たちも、もうほとんど退職してしまった。
だけど、男性たちはまだ何人も残っている。
工場や、工場の事務所にいるから、顔を合わせることはあまりなくなったけれど。
「今日早番?遅番?」
「遅番。」
「飯行こうぜ。」
「今日は予定あるの。」
「じゃ、明日。」
「ミユキも誘っておくね。」
「了解。」
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