第10章

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何年も前までは、定期的に同期で飲み会もしていたなぁ。 なつかしい。 小宮はファイルを確認し始めたから、私はディスプレイを詰めた箱を探す。 使い回せる色や形のものは、届きやすい場所に置いてあるけれど、ひな祭りは一年に一度だからなぁ。 やっぱり。 棚の一番上に発見した。 脚立…ほどでもない高さだな。 確か、中身もそれほど重くなかったと思うんだよなぁ。 うーん、と手を伸ばしてみると、なんとか届きそう。 指先で、スススッと箱を動かす。 よし、そろそろ… 「うわ、バカ!なにしてんだよ!」 「へ?」 小宮の声が聞こえたかと思った瞬間、目の前にスーツとネクタイが見えて、箱がドンと戻される音が聞こえた。 「脚立使うか、おれそこにいるんだから、呼べよ!」 「ご、ごめん。」 「一華チビだから見えてないけど、上にもういっこ箱乗ってたから!」 「え?気づかなかった…。」 「だーかーらー、確認しろっつーの。」 「…ごめん。」 「脚立どこ?」 「そこの奥…。」 「ったく、仕方ねぇな。」 小宮は脚立を見つけると、運びながら戻ってくる。 「わ、私やるから。」 「いいよ。」 小柄とはいえ、しっかり男の人なんだなって、少し笑えた。 「しかも、重てぇんだけど!」 「うそ?」 ほらっと渡されて、受けとると、ズッシリ重い。 とりあえず一旦床に置こうとした瞬間、また箱を奪われた。 「どこ?事務所?」 「うん。」 重いだの、バカだの呟いている。 ほんっと、変わらないなぁ。 始めの頃は、口が悪くてぶっきらぼうで、あまり好きではなかった。 でも、意外に優しいところもあるんだよね。 今ならわかる。 「ほらよ。」 事務所の空いている席にドンっと箱を置いてくれた。 「ありがと。」 「あらら、相変わらず仲良しだ。」
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