第10章

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「一華好きだよね。」 「好き好き。可愛いもん。」 「私、最近恐ろしいお雛様を見たんだけど…。」 「え、ホラー?」 「ううん。 お雛様ってセットで売ってるものだと思ってたじゃない?」 「え?違うの?」 「うん。 雑貨やさんで、バラ売りされてたの…。」 「!?」 「値段の関係なのか、もしかして手作りだから好きな表情の子を選ぶ為なのかわからないけど…。」 「数は、ペアは合うの!?」 「わかんないー! なんか切なくなっちゃった…。」 「いやいや、ミユキは切なくなんないでしょ?」 「そういうことじゃないんだよー!」 「怖いねー。」 選ばれるって、怖い。 理不尽だとも思うけれど、自分だっていろいろなものや事を選んできた。 「じゃぁ、一華は売れ残ってる方で、ミユキは無事にお買い上げされたやつってこと?」 入り口に、意地悪な顔で小宮が立っている。 「盗み聞きしないでよ。」 「なにより、なんか失礼な事言ってんだけど!」 「仕事しろ、仕事。 売れ残って、職ナシなんて困るだろ?」 「本気で失礼なんだけど!!」 「はいはいはい。 小宮、謝れ。」 「…どうも、すみませんでした。」 全く心なんてこもってないトーンで言われても、ちっとも謝られた気分になんてならないけれど、これ以上遊んでもいられない。 「仕事しまーす。」 箱を持ち上げて、休憩室へ運ぶ。 ざっと確認しただけでも、痛んだり色褪せてる飾りが多いな。 作り直せるものは、作り直して、良さそうな飾り物がないか気にかけておかなきゃ。 「一華先輩、確認いいですかぁ?」 「うん!」 「お願いします。」 明日の納品の発注票を確認する。 「いいと思います!」 「ありがとうございます。」 「ひな祭りの飾りに使えそうな材料って、まだ残ってたかなぁ?」
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