第10章

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不機嫌ポイントがわかりにくいから、別行動できるなら、その方が面倒じゃなくていい。 一足先にお店を出て、文具屋さんへ向かう。 「ハナちゃーん!」 両手をブンブン振りながら、近づいてくる。 「なにしてんの? サボり?」 「やっぱり、気づいてない。 オレ休みだよ。」 「あ、ごめん。」 「ハナちゃんは、サボり?」 「違うよ。買い出し。」 「そうなんだ。 どこに行くの?」 「文具屋さん。」 「…途中まで一緒に行きたいけど、サボってるって誤解されたら困る?」 「あ、一緒に来てる人がいるんだ。」 そう言い終わるか終わらないかのタイミングで、 「一華、まだここにいんのかよ。 お前の足、短いから…。」 小宮がもう来てしまった! 「カズマ、仕事終わったらお店行くね!」 それじゃあ、と、去ろうと思ったのに。 「一華の…弟?」 小宮の視線がカズマに向く。 「一華さんとお付き合いしてます。」 カズマは笑顔でそう答える。 なにこれ! 恥ずかしいんだけど。 しかも相手、小宮だし! そんなことしなくていいのに。 「えええ? 失礼しました。」 小宮は、見たことのない笑顔で頭を軽く下げている。 「時間、ないから! カズマ、じゃあね。」 「お仕事がんばって~。」 ヒラヒラと手を振っている。 「年下?どこで騙したの?」 文具屋さんに到着したころ、小宮がニヤニヤしながらこっちを向く。 「教えない。」 「駅前のさ、美容室の子だよね?」 子、っていうほど年離れてないのに。 「そうだよ。知ってるの?」 「このあたりだと、有名じゃん。」 「ふーん。」 知らぬフリをして、色紙やリボンを選んでいると、 「一華には、安心して定年まで働ける環境を作るからな。」 肩にズシリと手を載せられた。 「それはありがたいですが、どういう意味でしょうね。」
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