第10章

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「うちの会社って、寿退社する子が多いから、まだ前例がないんだけど、やっぱりこれからは長く勤めてもらうことも考えなきゃいけないからな。」 「あーのーさぁ、いろんな意味で問題も含んだ発言だと思うんですけど。」 「…二人の秘密にしてもらえるか?」 「いや、カッコよくないし? って、カッコいいから許されるとか、ないからね?」 「えええ、一華さん、いいじゃないですかぁ?」 「年下キャラとか、気持ち悪い。」 「…どんまい?」 「なんで、慰められてんの?」 もー!! 小宮と話してると面倒なんだってば! …疲れてきた。 ササっと、必要な材料を選んでカゴに詰めて、小宮に渡す。 「お願いします。」 「はいはい。」 会計を任せようとは思ったけれど、一応レジに着いていく。 「あ、ハナちゃん?」 店員の男の子が、にこにこしている。 知り合い…だったかどうかと、思考を巡らせる。 でもハナちゃんって呼ばれるってことは…。 「ハロウィンでは、お世話になりました。」 そう言って頭を下げられて、やっと思い出した! 「ラッピング! こちらこそ、ありがとうございました!」 慌てて頭を下げる。 ラッピング用品を提供してくれた、カズマの友だちだ。 「いえいえ。 クリスマスもなにかするのかと思ってたんですが…。」 「できればなにかお手伝いしたかったのですが、お店が忙しくて…。」 「あー!そうですよね。」 領収書をチラリと見て、気づいたらしい。 「あ、でもまたなにかするって話はあるみたいですよ。 その時には、ご協力していただけると嬉しいです。」 「もちろんです!」 今まで知らなかった人も、些細なことで繋がる。 嬉しいな。 「また伺います。」 「ありがとうございました。」 店を出てから、さっきまでの営業スマイルのかけらも残っていない小宮がこっちを向く。
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