第10章

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「なんかやってんの?」 「商店街のイベントのお手伝い。 あ、店長からは副業の許可もらったよ?」 「…。」 「なーに?」 「今はまだいいけど、一華は先のこと考えてんの?」 「先のこと?」 またその話か…と、思ってないわけじゃない。 小宮が心配する気持ちも、わからなくはない。 「定年まで、店頭で販売だけってわけにはいかないかもしれないぞ?」 「…。」 「ミユキみたいに、早めに事務職するとか、いっそ店長狙うとか考えてんのか?」 「事務職には、移動できないか相談してるよ!」 「知ってる。 だけど、今のままじゃ難しいぞ。」 「え?」 「お前、遅すぎんだよ。 事務職狙うなら、もっと早くからじゃないと、他の子たちはもうとっくに申請してる。」 「…え?」 「なんでミユキと一緒に事務職申請しなかったんだよ。」 「だって、接客したくて…。」 「だーかーら、先のこと考えてねぇって言ってんだよ。」 小宮の言うことは、正論だと思う。 そう思いつつ、話している内容がちっとも頭に入ってこない。 「定年まで働くって、おれはすごくいいと思ってるけど、上はまだそう思ってない。 今、一華に事務職に移動させるより、もっと下の子をさせたほうがいいと思ってる。」 「…。」 「ミユキもいつ辞めるかわかんない、で、一華は同期だから、もしかしてそろそろ寿退社もありうる年齢になってくるだろ? それなら、年下を移動させたほうが長く使えるって話になってる。」 「…。」 「一華の能力が高いのはわかってる。 だけど、それだけじゃどうしようもなんないことも、あんだぞ。」 「…。」 「って、今言うことじゃなかった。 悪い。」 本当に悪いと思ってるのだろうか。 だけど…。 苦しくて、痛いけれど、間違えていないからくやしい…。
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