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カズマに甘えたくない。
でも、甘えたい。
矛盾した気持ちが、心の中をぐるぐると渦巻く。
~♪
ケータイの着信音が鳴る。
ディスプレイには、お兄ちゃんの名前。
「!!!」
忘れてた!
慌てて通話ボタンを押す。
「一華?
仕事終わった?」
「ごめんなさい!
今からでも大丈夫ですか?」
「うんうん、大丈夫だよ。
迎え行こうか?」
「大丈夫。
すぐ向かいます。」
通話を終えて、
「カズマ、ごめん。
私お兄ちゃんのところで、レンさんと会わなきゃ!」
「ハナちゃん、体調は…?」
「ごめん、帰ったら…話す…。」
「うん、わかった。
いってらっしゃい。」
カズマに見送られて、走る。
と、いってもすぐに息があがる。
体力落ちてるなぁ。
走りたいのは山々だけど、できるだけ早く歩いて駅前まで到着したところで、
「一華!」
「お兄ちゃん?」
「そろそろかなって、待ってた。
おいで?」
「ありがとう。」
一緒に歩きながら、駅前のいくつかのビルの中の事務所に案内された。
「失礼しまーす。」
小ぢんまりとはしているものの、見渡す限りきちんと整理されていて、ちょっとイメージと違ったな…なんて。
「そこのソファ、座って。」
「ありがとう。」
お兄ちゃんはそう言うと、簡易的についたてで仕切っている向こうに回る。
「レン、一華来たよ。」
「ん~…あー、妹?」
見えないとはいえ、おそらく寝ていたんだろうと思う。
それを隠すわけでもなく、頭をガシガシかきながら、あくびまじりで近づいてきて、向かいのソファに座る。
「急に来てもらって悪いね。」
「いいえ、」
「一応、契約書見てもらおうと思って。
あ、アキ~、どこやったっけ?」
「はいはいはい。」
お兄ちゃんが、お茶をのせたトレイを持って給湯室らしき部屋から出てきた。
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