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私とレンさんの前にお茶を置くと、机の上に置いてあったファイルを、レンさんに渡している。
「商店街のイベントって、商店街の人には利益に繋がるから、多少無理してもらうこともあるんだけど。
一華ちゃんは商店街の中のお店に勤めてるだけだから、ボランティアってわけにもいかないからね。」
「…はい。」
ボランティアじゃ、嫌だと思っているわけじゃない。
ハロウィンの時のように、お手伝いして楽しかった。
…だけど、大変じゃなかったわけでもなくて、多少の無理はした。
と、いっても、それをどうしてもお金に結びつけたいとは思っていなかった。
「契約書、目通してオッケーだったら、また連絡して?
わかんないことがあれば、アキに聞いて。」
「わかりました。」
「お金で動くっていってしまうと、ニュアンスが微妙かなって思うけど。
好意だけじゃ続かないこともあるし、好意が当たり前になって、もっと…って要求されたときに、相手のことも嫌になったら、悲しいからね。」
サラリと流れるように話すから、なんだか心地の良いその声に聞き惚れて、聞き流してしまうところだった。
「ってことで、あとはアキに任せる。」
そう言うと、上着を持って出ていってしまった。
慌てて立ち上がって頭を下げたところに、パタリとドアが閉まった。
「せっかく来てくれたのに、あんなんでごめんな。」
「ううん、こちらこそ遅くなってごめんなさい。」
「なんかあったのか?」
「…ううん。」
「そ、っか。
飯でも食いに行かないか?」
「あー…、約束してるから。」
「残念。」
「ごめん。」
お兄ちゃんが書類を封筒にいれてくれて、受けとる。
「レンの説明が足りない時は、いつでも聞いていいからな?
アイツ説明が不親切なんだよ。」
「ううん、さっきの話、すごくわかるよ。」
「そうか?」
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