第10章

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私とレンさんの前にお茶を置くと、机の上に置いてあったファイルを、レンさんに渡している。 「商店街のイベントって、商店街の人には利益に繋がるから、多少無理してもらうこともあるんだけど。 一華ちゃんは商店街の中のお店に勤めてるだけだから、ボランティアってわけにもいかないからね。」 「…はい。」 ボランティアじゃ、嫌だと思っているわけじゃない。 ハロウィンの時のように、お手伝いして楽しかった。 …だけど、大変じゃなかったわけでもなくて、多少の無理はした。 と、いっても、それをどうしてもお金に結びつけたいとは思っていなかった。 「契約書、目通してオッケーだったら、また連絡して? わかんないことがあれば、アキに聞いて。」 「わかりました。」 「お金で動くっていってしまうと、ニュアンスが微妙かなって思うけど。 好意だけじゃ続かないこともあるし、好意が当たり前になって、もっと…って要求されたときに、相手のことも嫌になったら、悲しいからね。」 サラリと流れるように話すから、なんだか心地の良いその声に聞き惚れて、聞き流してしまうところだった。 「ってことで、あとはアキに任せる。」 そう言うと、上着を持って出ていってしまった。 慌てて立ち上がって頭を下げたところに、パタリとドアが閉まった。 「せっかく来てくれたのに、あんなんでごめんな。」 「ううん、こちらこそ遅くなってごめんなさい。」 「なんかあったのか?」 「…ううん。」 「そ、っか。 飯でも食いに行かないか?」 「あー…、約束してるから。」 「残念。」 「ごめん。」 お兄ちゃんが書類を封筒にいれてくれて、受けとる。 「レンの説明が足りない時は、いつでも聞いていいからな? アイツ説明が不親切なんだよ。」 「ううん、さっきの話、すごくわかるよ。」 「そうか?」
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