第10章

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家まで送ると言ってくれたお兄ちゃんを、途中で振りきって、ひとりで家まで歩く。 レンさんの言っていたことは、すごくわかる。 親切が当たり前になってしまうこと。 きっとそこに、悪意なんてないから、受け取った側は腑に落ちないのに飲み込んでしまう。 緩やかな、毒素のようなものなのかもしれない。 少しずつ少しずつ心に溜まって、いつか大きな不満や悪意のようなものになってしまう。 「ただいまぁ。」 玄関を開けると、家の中が明るくてホッとする。 「おかえり~。」 エプロン姿のカズマが、玄関まで出迎えてくれた。 「ご飯作ってたよ~。」 「ありがと。」 こういう優しさに、泣きそうになる。 ひとりで耐えて、悩んで、進んできたつもりだったけど、実はたくさんの優しさに支えられているのかもしれない。 だけど…。 全てを頼ってはいけない。 親切や優しさに甘えすぎると、いつか…。 「お風呂も入れるよ? ご飯とどっち先がいい?」 「ありがとう。 お風呂入ってもいいかなぁ?」 「もちろん!」 カズマや翔太の優しさに、私は甘えすぎていないだろうか。 カズマや翔太の心の中に、少しずつ毒素が溜まってはいないだろうか。 心の中のことは、他人にはわからない。 時には、本人だって気づかないこともある。 湯船に浸かりながら、ぼんやりとした不安に包まれる。 自分の選んだ道に、後悔していないつもりだった。 だけど、こんなに簡単に揺らいでしまう。 私の自信ってなんだったんだろう。 それに、私の不安や将来まで、カズマに背負わせたくない。 カズマとは、もっと…。 並んでいたい…。 せめて、追いかけていたい。 ブクブクと、湯船に沈みかけて、ザバッと身体を起こす。 考えなきゃ、 …だけど。 また間違えたら…どうする?
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