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「ハナちゃん、おいしい日本酒あるけど、飲まない?」
お風呂から出ると、カズマが日本酒の瓶を見せてくれた。
「ありがとう。
…今日はやめておこうかな。
ほら、翔太も一緒の時にしようよ?」
「…うん、わかった。
ご飯は食べるよね?」
「うん。ありがとう。
手伝うよ。」
「あ、その前に、髪乾かしてあげるよ。」
そっと伸びてきた手を、
「大丈夫!」
パチンと振り払ってしまった。
「ごめん…。」
「ハナちゃん~!
もう、なにがあったの??」
ぐいっと抱きよせられて、すっぽりカズマの腕の中に包まれる。
「ごめんね、もう…八つ当たり。」
「いいよ?
八つ当たりでもなんでも、受け止めるんだからさ。」
「怒ってよ…。」
「怒らないよ。
八つ当たりしてくれるってことは、甘えてるってことでしょー?」
カズマが、フフフと笑う声が耳に響く。
「甘えるなって、怒ってよ。」
「だから、ハナちゃんが甘えてくれるのが、嬉しいんだもん。」
「だもん、じゃないでしょ…。」
「八つ当たりするのも、わがまま言うのも、許せるくらい好きなんだから、仕方ないじゃん。」
「…いつか嫌になるよ。」
「嫌になるくらい、一緒にいてよ?」
「嫌になったら、別れなきゃならないじゃない。」
「違うよ。
嫌になるくらい一緒にいるうちに、きっともっと好きになる。」
「…バカ。」
「だーかーらー、オレ、ハナちゃんの前ではバカでいいよ?」
寄りかかってしまいたくなる。
優しさに甘えてしまいたくなる。
ダメなのはわかっているのに、少しだけ…。
そっと、カズマの背中に手をまわす。
一瞬カズマが驚いたような気がしたけれど、そのままぎゅっと力をこめる。
一緒にいたい。
離れたくない…。
いくら強がってみせても、これだけは譲れないと思う。
…いつのまに、こんなに好きになっていたんだろう。
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