第10章

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「ハナちゃん、おいしい日本酒あるけど、飲まない?」 お風呂から出ると、カズマが日本酒の瓶を見せてくれた。 「ありがとう。 …今日はやめておこうかな。 ほら、翔太も一緒の時にしようよ?」 「…うん、わかった。 ご飯は食べるよね?」 「うん。ありがとう。 手伝うよ。」 「あ、その前に、髪乾かしてあげるよ。」 そっと伸びてきた手を、 「大丈夫!」 パチンと振り払ってしまった。 「ごめん…。」 「ハナちゃん~! もう、なにがあったの??」 ぐいっと抱きよせられて、すっぽりカズマの腕の中に包まれる。 「ごめんね、もう…八つ当たり。」 「いいよ? 八つ当たりでもなんでも、受け止めるんだからさ。」 「怒ってよ…。」 「怒らないよ。 八つ当たりしてくれるってことは、甘えてるってことでしょー?」 カズマが、フフフと笑う声が耳に響く。 「甘えるなって、怒ってよ。」 「だから、ハナちゃんが甘えてくれるのが、嬉しいんだもん。」 「だもん、じゃないでしょ…。」 「八つ当たりするのも、わがまま言うのも、許せるくらい好きなんだから、仕方ないじゃん。」 「…いつか嫌になるよ。」 「嫌になるくらい、一緒にいてよ?」 「嫌になったら、別れなきゃならないじゃない。」 「違うよ。 嫌になるくらい一緒にいるうちに、きっともっと好きになる。」 「…バカ。」 「だーかーらー、オレ、ハナちゃんの前ではバカでいいよ?」 寄りかかってしまいたくなる。 優しさに甘えてしまいたくなる。 ダメなのはわかっているのに、少しだけ…。 そっと、カズマの背中に手をまわす。 一瞬カズマが驚いたような気がしたけれど、そのままぎゅっと力をこめる。 一緒にいたい。 離れたくない…。 いくら強がってみせても、これだけは譲れないと思う。 …いつのまに、こんなに好きになっていたんだろう。
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