第1章

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「あのさ、なんで隣?」 「え?ダメ?」 「ほらほら、そっちいって。」 「えー。」 向かいに座るように、肩をぐいぐい押す。 「仕事大丈夫?」 「うん。 今日はそんなに混んでないし。」 「そうなんだ。 …いつから手伝うようになったの?」 「さあ? 物心ついた時には、おしぼり運んでたよ。」 「あはは! なんか想像つく。」 「小学校の時は、同級生が商店街の店の子供が多かったから、放課後なんてみんな手伝いで遊ぶやつ全然いなくてさ。」 「どうして?」 「ほら、夕方って忙しい店が多いけど、うちは夜だから。 遊び終わってからでも、手伝い間に合うし。 でもよく翔太のうちに行って、勝手に手伝ってたけど。」 「ふふふ。 接客が好きなんだね~。」 「ハナちゃんもそうでしょ?」 「わ、私は…。どうかな?」 接客は嫌いじゃないけど、動機は商店街で働きたかったから。 職種はこだわらなかったかも。 「今となっては、商店街の2代目、3代目なんてほぼ知り合い。 っつか、同級生とか。」 「楽しそうでいいね。」 「まあ、楽しいけど。」 カズマはニコニコしながら、焼酎を飲んでいる。 ~♪ メールの着信音が鳴る。 ケータイを開くと、彼からのメールが届いていた。 『今日は無理かも。 ごめん。』 ため息がひとつ。 …ふたつ。 『わかったよ。 また今度ね。』 返信を終えて視線をあげると、カズマとバッチリ目が合う。 「な、なに?」 「…カレシ?」 「うん。 今日は無理、って。 ‘今日も’なんだけどなぁ。」 「ふーん? どこが好きなの?」 「はい?」 「ハナちゃん、楽しくなさそ。」 「そりゃあ、最近会ってないし。」 「へー。」 「仕事忙しいみたいだし。 邪魔はしたくないもん。」 「…ホントに仕事?」 「え?」 カズマの言葉に、胸がザワザワする。
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