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翔太がビールの缶をそっとテーブルに置く。
「経営としては、先を見越すことも大切なのかもしれないけど、人としてはどうなのか、って。」
カズマが慎重に探るように、でもしっかりと言葉を繋ぐ。
「その仕事がすきで、働きたいって思う人がどうして働いちゃいけないのかなって。」
ポタリと涙が落ちた。
「わー!!
ハナちゃん、ごめん!」
カズマが服の袖で涙をぐいぐい拭う。
翔太の手がそっと伸びてきて、頭を撫でてくれて、カズマがパシッとその手を振り払う。
「ごめん、あのね、もっと器用に生きられたらって思うんだけど。
それでも、私は私の道を考えて選んできたはずなんだけど、もしかして間違えてたのかもしれないと思ったら、やっぱり少し不安になって…。」
「ハナちゃん。」
「ごめんね。」
「謝らないの!
っつーか、翔太気ぃきかせろよ。
邪魔だよ。」
「全然気づかなかった。」
翔太はそう言って笑うけれど、その場から動く気はないみたい。
カズマにギュッと抱きしめられた。
「ごめんね。
また考えるから。
これからどうしたいのか、どうすればいいのか。」
「うん、ゆっくり考えてみたらいいよ。」
「ありがとう。」
「バカップル、そろそろ終わりにしてくんない?」
「だーかーら、お前が気を利かせればいいだけだろ?」
「俺、気ぃ利かないからさ。」
「…あはははは!」
不安が消えるわけじゃないけれど、帰る場所があって、話を聞いてくれる人がいるって、幸せなことだなぁ。
間違えないように慎重に選んできたつもりだったのに。
…ううん、そう思ってはいるけれど、たくさんのことを間違えていたかもしれない。
だけど…。
今、こうしていられる決断は間違えていなかったって思う。
「そういえば、ハナちゃんほんとにレンさんの仕事手伝うの?」
「今日少し話してきたよ。」
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