第10章

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住み心地はすごくよくて気に入っているけれど、遊園地やテーマパークがあるわけじゃない。 なにと言えば、温泉はあるけれど、やっぱりそこまで有名でもないから、雑誌にはあまり載らない。 「そんなに悩むなら、行かなきゃいいじゃん。」 翔太が苦笑いしながら言う。 「いろんな意味で悩んでんだよ。」 「は?」 「行きたいところはたくさんあるけど、近すぎて知り合いとかに会って邪魔されたくないし、遠すぎて疲れさせたら嫌なんだよ。」 カズマが頭をがりがりかいて、ふてくされたように顔をそむけながら言う。 「ハナさんは?」 「私?」」 「ハナさんの希望は?」 「私はどこでも楽しいよ?」 「ハナちゃん…。」 「前みたいに、行き先も決めないで電車乗って…っていうのも、いいなぁって思うよ?」 「おいしいもの食べたいとかは?」 「あはは、おいしいものは毎日食べてるから。」 「!!!」 「カズマや翔太の作ってくれるごはんが一番おいしいよ。」 「ハナさん…。」 「…もー!!! 翔太すげぇ邪魔!!」 「あははは!」 笑いすぎて涙が出そう。 「あ、それじゃあ、ここはどうかな?」 パラパラと雑誌をめくっていた時に、小さく載っていたのを見つけていた。 「??」 カズマと翔太ものぞきこむ。 「前にカズマが連れていってくれた、カフェのもう少し先にあるホテルだよね? ご飯おいしいらしいよ?」 「やっぱりハナちゃん、おいしいごはん好きじゃん~。」 「ははは。」 「うん、いいよ。 予約しとこっか。」 「うん。」 カズマに、お試しでいいからつきあってと言われた日に行った場所。 そうそう、ケイトくんに会ったのも、この近くのショッピングモールだったっけ。 不思議と、もうなんにも思わない。 乗り越えた…って思ってもいいのかな。
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