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あの時は、断らなきゃいけないと思っていたのに。
今は、離れたくないと思ってる。
…あの時も、本当は離れたいとは思ってなかった。
少しは素直になれてるのかなぁ。
欲張りすぎてないかなぁ。
カレンダーを眺めながら、休みの確認をした。
次の日からは、事務所に小宮が常駐していて、正直居心地が悪い。
「一華、報告、連絡、相談は仕事の基本だろ?」
「いや、仕事はそうだと思うけど…。」
そもそも小宮が余計なことを言うから、うっかり忘れてしまっただけなのに、そんなにネチネチ怒らなくても、って思うんだけど。
「小宮、ほんっと一華をいじめるよね。」
ミユキがため息をつきながら笑う。
「一華、おれのこと嫌いだろ?」
「嫌いだよ~!」
「そのムダな確認必要?
今日ご飯行くから、ふたりとも仕事して…。」
ミユキがそう言うと同時に、事務所から逃げ出す。
小宮にご飯誘われてたのを、ミユキに伝え忘れていただけなのに。
そもそも、小宮の目当てはミユキなんだから、直接誘えばいいのに…って、それができたら、ああはなってないのか。
そこだけを思うと、同情しなくもないかな。
って!
私に同情されたと知ったら、またネチネチ言われそうだから、絶対に言わない。
売り場に戻って、作業台で飾りを作る。
「一華先輩、器用ですよね。」
一緒に飾りを作ってる後輩が言う。
「器用じゃないよ。
これは、慣れだよ、慣れ。」
「一華先輩って、小宮さんと仲いいですよね?」
反対側で作業している後輩が、恐ろしいことを言う。
「まさか…。
ただの同期で、一方的に絡まれてるだけだから。」
背中が悪寒でゾワゾワする。
「って、噂すると聞き付けてきたらホント嫌だから、やめよっ!」
「えええ?
一華先輩がこんなに嫌がるのって、初めて見たかもです!」
「確かに~!」
「へ?」
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