第10章

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あの時は、断らなきゃいけないと思っていたのに。 今は、離れたくないと思ってる。 …あの時も、本当は離れたいとは思ってなかった。 少しは素直になれてるのかなぁ。 欲張りすぎてないかなぁ。 カレンダーを眺めながら、休みの確認をした。 次の日からは、事務所に小宮が常駐していて、正直居心地が悪い。 「一華、報告、連絡、相談は仕事の基本だろ?」 「いや、仕事はそうだと思うけど…。」 そもそも小宮が余計なことを言うから、うっかり忘れてしまっただけなのに、そんなにネチネチ怒らなくても、って思うんだけど。 「小宮、ほんっと一華をいじめるよね。」 ミユキがため息をつきながら笑う。 「一華、おれのこと嫌いだろ?」 「嫌いだよ~!」 「そのムダな確認必要? 今日ご飯行くから、ふたりとも仕事して…。」 ミユキがそう言うと同時に、事務所から逃げ出す。 小宮にご飯誘われてたのを、ミユキに伝え忘れていただけなのに。 そもそも、小宮の目当てはミユキなんだから、直接誘えばいいのに…って、それができたら、ああはなってないのか。 そこだけを思うと、同情しなくもないかな。 って! 私に同情されたと知ったら、またネチネチ言われそうだから、絶対に言わない。 売り場に戻って、作業台で飾りを作る。 「一華先輩、器用ですよね。」 一緒に飾りを作ってる後輩が言う。 「器用じゃないよ。 これは、慣れだよ、慣れ。」 「一華先輩って、小宮さんと仲いいですよね?」 反対側で作業している後輩が、恐ろしいことを言う。 「まさか…。 ただの同期で、一方的に絡まれてるだけだから。」 背中が悪寒でゾワゾワする。 「って、噂すると聞き付けてきたらホント嫌だから、やめよっ!」 「えええ? 一華先輩がこんなに嫌がるのって、初めて見たかもです!」 「確かに~!」 「へ?」
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