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心配そうな顔をした後輩たちに囲まれていて、慌てて平静を装う。
「入社してすぐのこととか、ちょっと思い出しちゃっただけだよ~!」
「そうなんですかぁ?」
「今度お話聞かせてくださいね!」
「あはは、そんなに楽しい話なんてないよぉ?」
誤魔化しながら、気持ちを落ち着かせる。
今の状況は、私の個人的なこと。
だからもしこの中に、事務職へ移る子がいたとしても、それはその子が考えて申請して選ばれたことなんだから、今の私のこととは関係がない。
…頭ではわかってるけど、心が追い付かない。
仕事を終えて、ミユキと先に合流したかったのに、少し時間がかかるからと、なぜか小宮と二人。
「店決めてんのか?」
「ううん。」
「だよな。
忘れてたくらいだもんな。」
「!!」
ほんっと、いちいち引っ掛かる言い方をするんだから。
「なんか希望ある?」
「お酒があれば、どこでもいい。」
「はいはい。」
どこへ、なんて説明する気もなく、歩き始める。
慌てて後ろを着いていく。
「足短すぎ。」
「じゃあ、置いていって。」
並んで歩こう、なんて別に思ってない。
「可愛くないなー、」
「別に小宮に可愛いとか思われたくないから。」
「まぁ、そうだな。」
だいたい、こんなに突っかかるなら、交流しなくたっていいのに。
「小宮は彼女いないの?」
「欲しくないから。」
「その返答、おかしいって。」
「は?」
「彼女の有無を聞いただけであって、例え欲しいと思ったって、できるわけじゃないからね~。」
「あ、そ。」
攻撃してるつもりがあるのか、ないのかは知らないけれど、小宮の攻撃はバシバシ私に当たるのに。
私の攻撃は、スルリとかわされている。
…レベルが違うから?
いやいやいや。
負けているみたいで、気分が悪い。
つい、思い浮かべてしまったことを、追い出すように頭を振る。
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