第10章

47/61

514人が本棚に入れています
本棚に追加
/670ページ
心配そうな顔をした後輩たちに囲まれていて、慌てて平静を装う。 「入社してすぐのこととか、ちょっと思い出しちゃっただけだよ~!」 「そうなんですかぁ?」 「今度お話聞かせてくださいね!」 「あはは、そんなに楽しい話なんてないよぉ?」 誤魔化しながら、気持ちを落ち着かせる。 今の状況は、私の個人的なこと。 だからもしこの中に、事務職へ移る子がいたとしても、それはその子が考えて申請して選ばれたことなんだから、今の私のこととは関係がない。 …頭ではわかってるけど、心が追い付かない。 仕事を終えて、ミユキと先に合流したかったのに、少し時間がかかるからと、なぜか小宮と二人。 「店決めてんのか?」 「ううん。」 「だよな。 忘れてたくらいだもんな。」 「!!」 ほんっと、いちいち引っ掛かる言い方をするんだから。 「なんか希望ある?」 「お酒があれば、どこでもいい。」 「はいはい。」 どこへ、なんて説明する気もなく、歩き始める。 慌てて後ろを着いていく。 「足短すぎ。」 「じゃあ、置いていって。」 並んで歩こう、なんて別に思ってない。 「可愛くないなー、」 「別に小宮に可愛いとか思われたくないから。」 「まぁ、そうだな。」 だいたい、こんなに突っかかるなら、交流しなくたっていいのに。 「小宮は彼女いないの?」 「欲しくないから。」 「その返答、おかしいって。」 「は?」 「彼女の有無を聞いただけであって、例え欲しいと思ったって、できるわけじゃないからね~。」 「あ、そ。」 攻撃してるつもりがあるのか、ないのかは知らないけれど、小宮の攻撃はバシバシ私に当たるのに。 私の攻撃は、スルリとかわされている。 …レベルが違うから? いやいやいや。 負けているみたいで、気分が悪い。 つい、思い浮かべてしまったことを、追い出すように頭を振る。
/670ページ

最初のコメントを投稿しよう!

514人が本棚に入れています
本棚に追加