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遠慮なく、お肉を頼んで待つ間、チーズをつまみながらミユキが口を開く。
「辞めるなら辞めるで、時期を早く決めてくれって催促されちゃった。」
「…え?」
グラスを掴もうとした手が、戸惑いでさ迷う。
「小宮、話止めててくれたんでしょ?
ありがと。」
「…悪い。力になれなかった。」
「ううん、私も中途半端な状態だったからね。」
「え?どうして?」
「私の都合で考えると、妊娠したら辞めたいなぁって思うけど、そんなのっていつになるかわからないじゃない?」
「そりゃ、そうだけど。」
「会社的には、辞めるなら辞めるで、求人出したりしなきゃないだろうし、会社の都合もあるって。」
「けど、そこで辞めたら会社の都合優先したってことで、ミユキの都合はスルーされてんじゃん?
だけど、なんも出来なかった。」
そう言って、小宮が苦い顔をしながら、ゴクリとビールを飲んだ。
「早めに知らせたかったんだけど、悪い。」
「ううん、小宮が悪いわけじゃないよ。
そこで、私の場所に一華を…って思ったんだけど、ごめん。
どうやらそれもうまくいかなそう…。」
「ミユキ…。」
「悪い。
それは一華にもう話した。」
「…そっか。ごめんね。」
「ううん。
…そうだったんだ。
知らなくて、ごめん。」
「そんなことないって。
力になれてないから。」
「若いからって、長く勤めるかどうかなんて、わかんないと思うんだけどなぁ。」
「そうだよね。
一華が辞めると思ってた小宮なんて、特に見る目ないだろうから?」
「うわ、確かに。」
「あはは。」
「少年にはなにか話したの?」
「あー…、」
小宮が小首をかしげて、ミユキが「一華の彼」と小さく言う。
「結婚しよう、養う。
って、言いそうだけど。」
「えええ、言わないよ。」
「言わないけど、思ってるんじゃないの?」
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