第1章

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翔太と一緒に、カズマの家を出る。 「ハナさん、なんでカズマにはキツいの?」 「だって、カズマは優しすぎるから。 もっと自分のこと考えて欲しいなぁ。 …って、私が邪魔してるんだよね。」 「カズマ、ハナさんだから優しいんだと思うけど。」 「えー? そんなことないよ。」 「夜、来なかったら迎えに行くからね。」 「わかったよ。 お仕事頑張ってね。」 「ありがとう。」 別れ道で翔太に手を振って家に戻る。 鍵を開けて家に入る。 …なんだか他人の家になっちゃったみたい。 ひと休みすると、そのまま動くのが嫌になりそうで、勢いでやるしかない。 洗濯機をスタートさせて、食器を洗う。 バサバサと布団を整えて、掃除機をかける。 洗濯物を干して、お風呂掃除をしてから、冷蔵庫を開けて食材のチェックをすると、あっという間に夕方になってしまった。 ケイトくんはしばらくいないみたいだから、買い物はしなくてもいいかな。 ベッドに横になる。 私、なにやってるんだろう。 気持ちが揺れる。 着替えて軽くメイクをして、駅前のどこかで美味しそうなお菓子でも買おう。 昨日迷惑をかけてしまったから、大将に渡そう。 久しぶりにゆっくりデパートを回る。 おせんべいも美味しそうだけど、チョコもいいなぁ。 カズマは甘いの好きだったはず。 地下でおかきとチョコを買ってから、1階を通り抜けようと歩いていると、ジュエリーコーナーが目に留まる。 キラキラ光る指輪が眩しい。 きっと幸せな気分で選ぶんだろうなぁ。 他人事のようにそう思って、カズマのところへ向かう。 お店の戸を開ける。 「お、ハナちゃん。 おかえり。」 大将が笑顔で迎えてくれて、ホッとする。 「昨日はご迷惑おかけしました。 良かったら、食べてください。」 「気使わなくても、いつでもおいで! ありがとうね。」 「あ!ハナちゃん!」
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