第10章

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「えええ? 結構チャラそうなのに?」 「小宮、失礼だから。 ああ見えて、一途だからねぇ?」 「一華、結婚すればいいじゃん?」 良いアイディアを発見!と、言わんばかりだけど。 「あのさー、なんかそれって違くない?」 ため息が出そう。 「そんなもんなんじゃねぇの?」 「ほら、小宮は無神経だから。」 「はああ??」 「逃げるみたいで、嫌なの。」 「はいはい、そう言ってるうちに、年取ってひとりになってるって、よく言うじゃん?」 「ほんっと、他に言い方とかないわけ?」 「言い方変えたって、結局は同じだろ?」 「小宮…うちの店で店長とか狙ってんなら、そういうところもっと気を付けたほうが…。」 ミユキの言葉を遮るように、 「もちろん、使い分けてるよ?」 後輩たちに向けている笑みを見せられて、背筋がぞわぞわした。 「使えるもんは、使わないと損じゃね?」 「結婚は損得じゃないでしょ…。」 「いや、お互いにメリットはあるんじゃないか?」 「お金のこととか?」 「それもあるけど、精神的に安定するとか、社会的に認められる方法のひとつ、とか。」 「確かに、間違ってもないような気もする。」 ミユキが神妙な表情で頷く。 「お互いに安心するっていう部分もあるかもしれない。」 「安心?」 私はピンとこない。 「結婚するってことは、契約もしてるわけでしょ? 私はあなただけを、永遠に…って。 だから、私だけの人っていう、安心感。」 「でもそれさぁ、永遠に想い続けられない人が多すぎるから、契約しなきゃいけないって風にも思えるんだけど。」 「小宮…。」 「約束って守らなきゃいけないっていう、モラルというか、その為って人も意外に多かったりして。」 「なんかツラい思いでもしたの?」 ミユキが哀れむように、小宮を覗きこむ。
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