第10章

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「ハナさんは、両手に荷物を抱えてたとして、カズマは片手に持てる程度の荷物しか持ってないのに、それすら持とうって無理してるみたい。」 「…へ?」 「お互いに、持ちきれない荷物を持つ時もあるかもしれないけど、その確率の方がきっとずっと低くて、どちらかは余裕ってあるものだと思う。」 「…。」 「俺は、いつでも手伝えるように、片手くらいは常に開けておきたいって思ってるけどね?」 「…。」 「だから、全部自分で背負わなくていいんだよ?」 「翔太。」 「俺は片手空いてるし、カズマだって片手くらい余裕で空いてるよ。 ハナさんの抱えてるもの、分けてくれても負担になんてならないよ。」 「…ありがと。」 グッと胸が詰まる。 こらえないと、喉が熱くなって、涙が落ちそう。 カズマがタオルで髪の毛を拭きながら、 「ビール飲むひと~。」 なんて、のん気に冷蔵庫の前から呼んでいる。 「はいっ!」 目尻に浮かんでしまった涙を、指で拭って返事をする。 「どーぞ。」 カズマはビールをテーブルに置くと、私の頭をぐりぐり撫でる。 「ちょっと、なあに?」 痛くなんてない。 むしろ、くすぐったいほど優しい。 「ハナちゃん、旅行楽しみだね。」 「そうだね。」 なんだか親切にプルタブまで開けてくれている。 「ご飯楽しかった?」 「…うん。」 心がキツくならなかったかといえば、わからないけれど、小宮も私を責めているわけじゃなくて、気にかけていてくれてることは、すごくわかる。 ミユキにも、いろいろ事情があったことも、今日のことがなかったら、知らないまま過ごしていたと思う。 友だちだから、全てを知りたい。 知らないから、友だちじゃない。 そんな風に決めてしまうのは、ちょっと違うのかもしれない。 大切だからこそ、話しにくいこともある。
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