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「ハナさんは、両手に荷物を抱えてたとして、カズマは片手に持てる程度の荷物しか持ってないのに、それすら持とうって無理してるみたい。」
「…へ?」
「お互いに、持ちきれない荷物を持つ時もあるかもしれないけど、その確率の方がきっとずっと低くて、どちらかは余裕ってあるものだと思う。」
「…。」
「俺は、いつでも手伝えるように、片手くらいは常に開けておきたいって思ってるけどね?」
「…。」
「だから、全部自分で背負わなくていいんだよ?」
「翔太。」
「俺は片手空いてるし、カズマだって片手くらい余裕で空いてるよ。
ハナさんの抱えてるもの、分けてくれても負担になんてならないよ。」
「…ありがと。」
グッと胸が詰まる。
こらえないと、喉が熱くなって、涙が落ちそう。
カズマがタオルで髪の毛を拭きながら、
「ビール飲むひと~。」
なんて、のん気に冷蔵庫の前から呼んでいる。
「はいっ!」
目尻に浮かんでしまった涙を、指で拭って返事をする。
「どーぞ。」
カズマはビールをテーブルに置くと、私の頭をぐりぐり撫でる。
「ちょっと、なあに?」
痛くなんてない。
むしろ、くすぐったいほど優しい。
「ハナちゃん、旅行楽しみだね。」
「そうだね。」
なんだか親切にプルタブまで開けてくれている。
「ご飯楽しかった?」
「…うん。」
心がキツくならなかったかといえば、わからないけれど、小宮も私を責めているわけじゃなくて、気にかけていてくれてることは、すごくわかる。
ミユキにも、いろいろ事情があったことも、今日のことがなかったら、知らないまま過ごしていたと思う。
友だちだから、全てを知りたい。
知らないから、友だちじゃない。
そんな風に決めてしまうのは、ちょっと違うのかもしれない。
大切だからこそ、話しにくいこともある。
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