第1章

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カズマが出てきた。 「ご飯にする? ビールにする?」 「あはは。 ビールをお願いします。」 「了解。」 個室に案内をされる。 前にカズマが読んでいた本が、テーブルの上に開いたまま乗っている。 開いてるから、のぞいちゃおうかな。 チラリと見ると、調理の教科書みたいだ。 …もしかして。 「あー!見ないで!」 ビールを持ってきたカズマが慌てている。 「み、見てないよ!」 「ホントに?」 疑いの目を向けながら、パタンと本を閉じた。 「はい、ビール。 あとつまめそうなものを、適当に…。」 小鉢を並べてくれる。 かぼちゃの煮物と、小松菜のゴマ和えと、切り干し大根と、ひじきの煮物もある。 「ありがとう。」 「あ、ハナちゃん気を使って、お菓子持ってきてくれたんだね!」 「ご迷惑おかけしました。」 「いいんだよ。全然。」 「ありがと。」 「少しは休めた? 家事ばっかりしてたんじゃないの?」 「ばっかりじゃないけど。 やらなきゃ、終わらないから。 それに、いつ帰ってくるかわからないし。」 「…そっか。」 「お疲れー。 お、もうハナさんがいる。」 「翔太もお疲れさま。」 「カズマ、酒頼む。」 「はいはい。」 「ハナさん家に乗り込む気満々だったのに。」 「怖いから、やめて。」 「怖くないって。」 「あ、カズマが荒れてた時期って、翔太も一緒に暴れてたの?」 翔太は威圧感というか、そういうのがあるんだよなぁ。 「いや、バカに構うほどヒマじゃなかった。」 「うそつけ。」 カズマが日本酒を持って戻ってきた。 「え?どっち?」 「夜はいたね。 ただ成績は絶対落とさないし、家の手伝いもするから、なんとなく見逃されてたけど。」 「カズマの監視してただけだから。」 「あはは、なんか想像つく。」 「翔太の方が、カッコよく聞こえる!」
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