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「…指輪とか、用意してなくて、ごめん。」
急にどんどんカズマが沈んでいくから、焦ってしまう。
「カタチにばかり捕らわれないで、私たちには私たちのカタチがあるんじゃないかな?」
「…うん?」
「指輪なくったって、カズマの気持ちがすごくすごく嬉しいよ?」
「ハナちゃん。」
「それに、指輪が必要だったら、一緒に選びにいけばいいじゃない?」
「ハナちゃん。」
「一緒に出掛けて、一緒に選んで、楽しい予定がひとつ増えるよ。」
「ハナちゃん。」
「ふふふ、そんなに呼ばないでよ?」
「なんで、もう、そんなに…。」
ぐいっと、抱きよせられて、耳元で、
「かわいすぎる…。」
低くて優しい声に、背中がゾクリと反応する。
そっとカズマの背中に、手を回す。
正解、なんてわからない。
それでも、今守りたいと思うものを、大切にしたい。
もしかしたら、間違いなんて本当は存在していないのかもしれない。
周りという、不確かな存在にそう思わされてしまうだけで、自分自身に問うべきことなのかも。
どの道を選んでも、どんなスピードで進んでも、不安は振り切れないし、安心ってやつを掴みたくて手を伸ばしても、追いかけても追いかけても、永遠に掴めることはないのかもしれない。
追うほどに、逃げていくのに。
ふと足を止めてみると、まるでずっとそこにあったかのように、寄り添ってあるものなのかもしれない。
「カズマ。」
「ん?」
「ありがとう。」
「うん。」
私を見つけてくれて、手を伸ばしてくれて。
優しく包んでくれて。
ありがとう。
そう伝えたかったのに、のどの奥が重たくて痛くて、言葉にならない。
代わりに、どんどん涙が溢れて、流れて、止まらなくて。
カズマが優しく背中を撫でてくれた。
「ハナちゃん、ありがと。」
代わりに、ぎゅっと力を込めた。
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