第11章

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カズマとの旅行は、まさかの延期になってしまった。 と、いうのも、ミユキの退職の話はどんどん進んでいた矢先に、ミユキが倒れてしまった。 理由は、というと。 実は妊娠していたらしい。 本人も気づいたのが遅くて、体調も経過も安心できる状態じゃなくて、退職が早まってしまった。 妊娠は病気じゃないとか、動いた方がいいとか、臨月まで働くとか、できるならば無理のない範囲でするのは悪いことじゃないと思う。 だけど、万人に強要するのは、とても危険なことだと思う。 事務職を引き継ぐ人もまだ決まらず、店長と小宮で作業をしているものの、もちろんカバーしきれないので、手伝えることは私も手伝っている。 更に、新入社員の研修も始まってしまって、本音を言えるならば、てんてこまい状態だ。 会社の将来性を考えるのは、もちろん大切なことだと思うけれど、実際にはお店が営業できている前提があっての、将来だと思う。 効率だって、もちろん大切だけど、今事務所がバタついていて、お店自体にも影響が出ているのは、現実問題だから。 私は年齢も状態も考慮した結果、事務員には不可というレッテルを貼られているんだろう。 なのに、都合が悪くなると手伝えと言われるのは、気分がいいものではない。 だけどそれ以上に、できることをやらない自分の方が、もっとずっと嫌だなって思ってしまった。 これで評価が覆るなら、嬉しい限りだけど、そうならなくったって、なにもしなかったら私はずっと後悔してしまうから。 …そんなのは、嫌だ。 「一華、そこそこのところで切り上げろよ?」 お店が閉店したあとに、事務作業をしていると、向かいの机でパソコンを開いている小宮が言う。 「うん。 あと、研修マニュアルだけプリントしちゃいたいの。」 「は!?」 「プリンター使ってる?」 「いや、そうじゃねぇって!」
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