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店長は工場での会議に参加する為に、今日は不在だ。
と、いうかほぼ毎日事務所で小宮と残業をするのが日課になっている。
「うるさいなぁ?」
久々の再会からしばらくは、小宮に言われっぱなしだったけれど、それは私がグラグラしていたから、揺らいでいただけ。
「なんで、新人研修のことまでやってんだよ?」
「あのさぁ、何年何回新人研修担当してきたと思ってるのよ?
後輩たちは、現場のこと教えて、接客に慣れるようにサポートしつつ、通常の作業と接客もしてるんだから。
大変でしょ?」
「だから、お前はそれプラス事務作業してんだろ、って。」
「そうだよ?
だから、せめてサポートできることはしてるんじゃない。」
「そうじゃなくて…。」
思いきり眉間にシワを寄せて、盛大にため息を吐き出された。
「仕事抱えすぎ…。」
らしくない、優しい声で、気持ち悪いなぁ。
「残業代、交渉しとくから。」
「…ありがと。
でもさ、大丈夫だよ?」
「なんで。」
「ミユキのこともだけど、私のことも、色々掛け合ってくれてるでしょ?
だけど、小宮の立場ってのもあるんだから。」
「…で?」
「で、って…。
誤解されたり、不利になったりしたら、困るじゃない。」
「困んない。」
「なんでそう言い切れるの?」
ため息をつきたいのは、私かもしれない。
「会社側がおかしいと思うから、交渉してるだけ。
それが、一華とかミユキがおかしいと思ったら、全力で話し合うけどな。」
「…そう。」
妙に納得してしまった。
「心配しすぎ。」
「そりゃ、するでしょ。」
「どうも。」
「いいえ。」
全く心のこもっていないやりとりをして、思わずお互い吹き出してしまった。
「あはははは!」
「なぁ、それ終わらせたら、飯行かねぇ?」
「うん、いいよ。」
「じゃ、さっさとやれよ。」
「はいはい。」
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