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事務作業には、終わりがないと思う。
見渡せば、次から次へと仕事が待っている。
それでも、どこかで区切りをつけないと、続けていけない。
「終わった~。」
「じゃ、早く準備しろよ。」
「待ってよ。
せっかちだなぁ。」
着替えを済ませると、ほら早くとつつかれながら、外へ出た。
「どっかある?」
「行きつけの居酒屋ならあるけど?」
「カレシのとこ?」
「うん。
別のところでも、全然いいけど?」
「…そこ、連れてってよ?」
「いいの?」
「ああ。
せっかくだし?」
「意味わかんない。」
そう言いながら、大将のお店へ向かって歩く。
「ミユキのお見舞い行きたいなぁ。」
「休み取れよ。」
「うん、近々。
…小宮も行く?」
「遠慮する。」
「そっか。」
「他人の男が行く場所じゃねぇだろ?」
「…確かに。」
病院自体とてもデリケートな事情を含んでいるけれど、産婦人科となると余計に、男の人に立ち入って欲しくないと思う場合もあるかもしれない。
「小宮って無神経そうに見えて、案外めちゃくちゃ気使うよね。」
「ホメてんの?けなしてんの?」
「ホメてる、ホメてる!」
「使えるもんは、使うだろ。」
「…万人にできることじゃないと思うなぁ。」
「やるか、やらないかって選択肢はあるとしても、できるかできないかって言ったら、誰でもできんだろ。」
なんだろう。
小宮のそういうところが、時々すごいなと思う。
基準がものすごく高いところにあるようで、それなのにサッと飛び越えていくような。
「なんでやらないんだろう、って思うことないの?」
「過去に思ったことがないわけじゃないけど、他人の選択は他人のもので、おれのじゃないから。」
「…。」
「他人の考えは変えられないだろ?」
「そう、だけど…。
それじゃ、どうして会社にいろいろ掛け合ったりするの?」
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