第11章

4/50

514人が本棚に入れています
本棚に追加
/670ページ
事務作業には、終わりがないと思う。 見渡せば、次から次へと仕事が待っている。 それでも、どこかで区切りをつけないと、続けていけない。 「終わった~。」 「じゃ、早く準備しろよ。」 「待ってよ。 せっかちだなぁ。」 着替えを済ませると、ほら早くとつつかれながら、外へ出た。 「どっかある?」 「行きつけの居酒屋ならあるけど?」 「カレシのとこ?」 「うん。 別のところでも、全然いいけど?」 「…そこ、連れてってよ?」 「いいの?」 「ああ。 せっかくだし?」 「意味わかんない。」 そう言いながら、大将のお店へ向かって歩く。 「ミユキのお見舞い行きたいなぁ。」 「休み取れよ。」 「うん、近々。 …小宮も行く?」 「遠慮する。」 「そっか。」 「他人の男が行く場所じゃねぇだろ?」 「…確かに。」 病院自体とてもデリケートな事情を含んでいるけれど、産婦人科となると余計に、男の人に立ち入って欲しくないと思う場合もあるかもしれない。 「小宮って無神経そうに見えて、案外めちゃくちゃ気使うよね。」 「ホメてんの?けなしてんの?」 「ホメてる、ホメてる!」 「使えるもんは、使うだろ。」 「…万人にできることじゃないと思うなぁ。」 「やるか、やらないかって選択肢はあるとしても、できるかできないかって言ったら、誰でもできんだろ。」 なんだろう。 小宮のそういうところが、時々すごいなと思う。 基準がものすごく高いところにあるようで、それなのにサッと飛び越えていくような。 「なんでやらないんだろう、って思うことないの?」 「過去に思ったことがないわけじゃないけど、他人の選択は他人のもので、おれのじゃないから。」 「…。」 「他人の考えは変えられないだろ?」 「そう、だけど…。 それじゃ、どうして会社にいろいろ掛け合ったりするの?」
/670ページ

最初のコメントを投稿しよう!

514人が本棚に入れています
本棚に追加