第11章

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「それは、おれの意見を主張したいから。 人の考えも変わらないけど、おれの考えも変わらない。 だから、言う。」 「…。」 「相手を変えようとしてやってるわけじゃないから。」 「…。」 「だけど、思うことは伝えないと、思ってないのと同じになるみたいで、嫌だから。」 そう言ったところで、お店に到着した。 カラカラと、戸を開けると、 「ハナちゃん、おかえり!」 大将がいつもと変わらぬ笑顔で迎えてくれる。 「ただいま。 ね、小上がりと、カウンターどっちがいい?」 振り返って、小宮に聞く。 「カウンターがいいかな。」 「じゃ、カウンターにしよう。」 端の席に座る。 「ハナさん、おかえり。」 翔太がおしぼりを持ってきてくれた。 「ただいま。 これ、同期の小宮。 で、こっちが一緒に暮らしてる、翔太。 本業は、商店街のお魚屋さんなの。」 「これって、なんだよ。」 小宮が文句を言うけれど、お互いに会釈をしている。 「注文、どうします?」 「私ビール。 小宮もビールでいいよね?」 「ああ。」 「了解。」 翔太が奥に戻っていく。 小宮にメニューを渡す。 そういえば、最近メニューを見ていないかも。 お任せにしてしまうことが多い。 「へー…、色々あるんだな。」 「うん。 全部、おいしいよ?」 「一華のおすすめは?」 「私のおすすめは、大将のおすすめ!」 そう言うと、大将がカウンターの中から、 「ハナちゃんは、なんでもおいしそうに食べてくれるからなぁ。」 ニコニコしながら、お通しの入った小鉢を差し出された。 「小宮食べられないものある?」 「たぶん、ないと思う。」 「お肉とお魚、どっちの気分?」 「魚かなぁ。」 そう言ったところで、翔太がビールを運んできた。 「焼いたのと、煮たの、どっちがいいですか?」
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