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「私煮たのがいいなぁ。
小宮はどうする?」
「焼き魚食べたい。」
「翔太、お願いね。
あと、お刺身も食べたいなぁ。」
「わかったよ。」
翔太の後ろ姿を見ながら、
「乾杯?」
「乾杯。」
素っ気なくジョッキをカチンと合わせて、グイッと飲む。
「あー、おいしい!」
もう苦くない。
働いた後のビールは、最高!って感じだ。
お通しは、大根と鶏肉の煮物で、ホクホクでおいしい。
「大将、おいしい!」
「ありがとう。」
カウンターの中から、お礼を言われる。
同じ材料を使っても、きっと同じ味にはならない。
当たり前って、当たり前かもしれないけど、それが不思議だなって私は思う。
だからきっと人生で同じ出来事が起こったとしても、受けとる人によって、その時の気持ちや状況で、全然違った結果になるんだ。
「お待たせしました。」
翔太がお刺身を運んできてくれた。
サラダもどうぞ、と器を置く。
「ありがとう。」
小宮の方に取り皿を渡す。
「胃袋つかまれたのか?」
「あはは、そうかもしれない。」
「一華だから、いいんじゃね?」
「あ、そ。
もうちょっとギャップ埋めてよね。」
「は?」
「後輩たちに、小宮さんって優しいですよね、って言われるたびに、寒気がするんだけど。」
「本当のことだろ?」
「後輩たちには本当かもしれないけど、私には共感できない。」
「じゃ、否定すれば?」
「それも面倒なの。」
「なんで?」
「なんか変に誤解されそうというか、そんな気持ち悪いことになったら、耐えられない…。」
なんとなく、淡い好意を寄せている子がいるように思えてならない。
そんな中で、小宮は実は意地悪だ、なんて言ったところで、もし違った意味に受け取られてしまったら!
仲良しアピールだとか、彼がいるのにとか、そういうのはもう本当にいやだから。
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