第11章

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後から聞いた話では、前にも何人か泣かされた子がいたらしい。 私の様子を見ていた後輩が、先輩に知らせて、店長が来てくれたらしい。 店長が対応し始めた途端に、すんなり支払いを済ませて、お店を出ていった。 「気づくの遅くなってごめんね。」 店長に謝られたけど、もちろん店長は悪くないのはわかっていたし、それよりも…。 どういう目的かはわからないけれど、そういうことをする人がいるということ。 もしかして、私の不安が伝わってしまって、そうさせてしまったのかもしれない。 もしかして…。 考えるほどに、不安と怖さと悔しさの他に、自信がなくなってしまった。 接客も怖いと思った。 ニコニコしているからって、優しいわけじゃない。 …険しい表情だから、怒っているわけじゃないことも、今ではわかるけれど。 これも、表と裏…なのかなぁ。 ちょうどその頃に、同期で集まった飲み会で、小宮たちが上司がどうだの、先輩がとグチグチ文句を言っているのを聞いて、カチンときた。 …八つ当たりとも言うけれど。 それぞれに役割があって、会社が動いているのはわかっている。 それでも、思ってしまったんだ。 商品を作る人がいて、それを売る人がいるから、小宮たちが販売についての戦略だの宣伝だのを考えられるんじゃないの?って。 なのに立場はどうしても逆に思えて、発案する人がいて、計画を立てる人がいて、だから商品を作れて、売れる…。 そんな図式にしか思えなくて。 もちろん、今はそうじゃないってわかるけれど、いろいろモヤモヤした思いも抱えていたんだ。 「…ごめん。」 「いや、ビビったけど、確かにって納得したから。」 「へ? ビビった顔なんてしてなかったよね?」 「は? めちゃくちゃビビってたよ。 全員。」 「え…。」 「一華さぁ、大人しそうに見えるし、わりと無茶言っても聞くじゃん。」
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