第11章

15/50

514人が本棚に入れています
本棚に追加
/670ページ
触れるだけで、頭の中のことが伝わる、なんてことは、あるはずないってわかってるのに。 「ん?」 カズマが微笑むから、本気でゆでダコみたいになってしまいそう! 「ビール、おかわりー!」 「はいはい。」 カズマの背中を見送りながら、 「一華にも、かわいいとこ残ってんだな。」 「はい??」 「ほら、最初から印象最悪だから、女っぽいとか思ったことなかったから。」 ハハハと、爽やかに笑っているけれど、話していることは全然爽やかじゃない。 「そうだよね。 小宮はミユキしか見えてなかったからね。」 ちょっとした仕返しのつもりで、呟くように言っただけだったのに。 しばらく無言の時間が続く。 さすがに、マズイことを言ってしまったかもしれないと、おそるおそる小宮を見ると、 「赤…。」 耳まで真っ赤になって、黙ってお酒を飲んでいる。 「え、赤いよ?」 「酒飲んでるから。」 「いやいや、」 「別に、違うからな。」 「え?なにが?」 まさかの形勢逆転に、私が驚いてしまう。 「別に、奪いたいとか壊したいとか思ったことは、一度もないからな。」 「…一度も?」 小宮と出会う前、学生の頃からミユキは彼…旦那さんとつきあっていた。 「ああ。」 まさか、そんなことはないだろう、なんて。 他人事だから茶化してしまうなんて、私無神経だな。 「それでも、想ってたんでしょ?」 「…ああ。」 「そういう優しいところは、いいと思うけど。」 「一華に誉められるなんて、鳥肌もんだよな。」 「私にはどこまでも突っかかってくるよね。」 「別れろなんて思ったことはないけど、一華が羨ましいと思ったことはあるよ。」 「へ?」 「すげー、仲いいじゃん。 友達でいられたら、一生もんなのかな、なんて。」 「…小宮。」 「酔った。忘れろ。」 「…うん。」
/670ページ

最初のコメントを投稿しよう!

514人が本棚に入れています
本棚に追加