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「すげぇ仲いいのはわかってたから、知ってんだろうとか思ってた。
けど、時々一華変だから、知らないのかとも思ってたけど。」
「全く知らないんだけど。」
「あいつ、ホントそういう気は回すよな。」
苦笑いしているのに、嬉しそうで、胸がギュッと苦しくなる。
「…いつ?」
「うわ、そこは詮索するんだ?」
「言わないなら、初めから黙ってればいいじゃん。」
開き直って、聞いてしまおう。
「1回目は入社して2年目の頃。
ほら、彼氏が忙しくてとか言ってた時期あっただろ?」
「うん。
彼が急に部署移動になって、会う時間とか全然なかったって…。」
「ミユキも事務職に移動して、いろいろ相談とか乗ってたんだ。
その時に…。」
「え、おれなら大事にするよ?的な?」
「…ああ。」
素直に話してくれる小宮が、少し気持ち悪くて茶化してみたら、やっぱり素直でこわい。
「ミユキはなんて?」
「気持ちはうれしいけど、彼のこと大事だから待つってさ。」
「…そっか。」
小宮は、ふーっとため息を吐き出して、
「どうせ聞くんだろ?
2回目はミユキが彼氏と一緒に住むとかって頃。」
「えええ、そのタイミングで?」
「ああ。
住所変更とか手続きってどうするのか聞かれて、ダメ押ししてみたけど、ダメだった。」
どこまでチャレンジャーなんだろう。
普通に、なんて言い方がふさわしいかどうかはわからないけれど、同棲を始める前のカップルは、幸せ以外の何者でもないと思う。
会えない日々か重なって、もっとそばにいたい気持ちが募って、やっと一緒に住めることになるんだから、玉砕覚悟だったのだろうか。
「そこで、キッパリあきらめるつもりだったんだよ。
さすがに、おれもばかじゃねぇし。」
「…ばかだよ。」
「ダメだってことくらいは、わかってたよ。」
「…。」
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