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「それでも、自分が区切りをつけるために、ミユキも聞いてくれたよ。」
「…そっか。」
なにを言えばいいのか、わからなくなって、逃げるようにビールを口に運ぶ。
「で、３回目はって聞きたいんだろう？」
「うん。」
「仕事辞める時。」
「！！？」
「驚いた顔も悲惨だな。」
ひどい言い方だと、文句をつけるのも忘れてしまうくらいの衝撃だ。
「え？
だって、辞める時って、妊娠…。」
「ああ。」
シレッとしているけれど、それってどういう…。
「おれも自分でビビった。
なに言ってんだろうって思った。
でも、全部受け入れられるって思えたんだ。」
「子供のことも？」
「…軽はずみには言えないけど。
その時は思えた。」
「…。」
「もちろん、ばっさりキッパリ断られた。」
「うん…。」
「で、一華のことフォローしてって頼まれた。」
「…。」
「ミユキに言われなくても、フォローくらいしてやるつもりだったけどな。」
「…。」
なんて声をかけたらいいのか、わからない。
「奪いたいと思うより、なんでもっと早くに出会えなかったんだろうって思ったことは、何度もある。」
「…早く？」
「ああ。
ミユキが彼氏と出会うより早く、とか。」
「…。」
「早く出会っていれば、違った結果になってたかもしれない、ってな。」
「…。」
「だけど、その後に必ず思うんだ。」
「なあに？」
「おれが先に出会ってて、もし思いが通じたとしても、きっと彼氏に奪われるんだろうなって。」
「…。」
「それで結局また、後悔するんだろうなって。」
「…。」
「足掻いたって、どうにもなんないことの方が多いような気になる。」
ハハハと、もの悲しげに笑うから、そっと手でも添えたくなってしまった。
もちろん、そんなことは気持ち悪くてしないけれど。
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