第11章

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「でもさ、小宮は投げやりになってないじゃん。」 「投げやり?」 「ミユキのこと、大切に思ってることは私にでも伝わってたよ?」 「一華鈍感なのにな。」 「だから、ミユキも…きっと…。」 急に涙が溢れて、自分でも驚いた。 なにしてるんだろう! 絶対にまた…。 そう思ったのに、小宮はポケットからハンカチを取り出すと、無理矢理ぐいぐい押し付けられた。 「小宮なのに、ハンカチ持ってんの?」 「悪いか。」 「悪くないけど。」 「汚いとか言うなよ。」 「うん、思ってるけど言わない。」 「あああ?」 「洗って返していいの? 買い替えた方がいい?」 「そのまま返せよ。」 「やだ、とりあえず洗うよ。」 「いいよ。面倒だから。」 「面倒って、洗うのは私だから。」 「一華じゃなくて、洗濯機だろ。」 「あー、じゃあ心をこめて手洗いする。」 「気持ち悪いな。 念とか込められそうだから、まじやめて。」 「…。」 「…。」 小宮と目が合う。 一瞬、間を置いて、 「ぷ、」 「あはははは!」 思わず笑ってしまった。 きっと私がなにかうまいことを言ったつもりになったって、それは私の気が少しすむだけで、なんの意味もない。 忘れるとか、忘れないとかは別の問題で、小宮の心の中では、整理できているんだろうと思った。 私に泣かれたって、迷惑でしかないことはわかっていたし、私だって泣くつもりなんてなかったのに。 それでも、心が痛んだのは本当のことだから…。 「えええー、泣かせないでくださいよ~。」 通りかかったカズマが、困ったような優しい笑顔で、私の頭をそっと自分に寄せる。 きっと話は聞こえていたと思う。 だから、余計その優しさがちょっとくすぐったい。 「カズマくん、一華ってめちゃくちゃ面倒じゃない?」 小宮がカズマに問いかける。
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