第11章

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メイク落としを探しに、洗面所へ向かおうとして、台所の食卓にはいろいろな書類が広げられていることに気づく。 「勉強?」 コンクールは終わったといっても、またあるのかもしれない。 「うん。いろいろ調べたいことがあったから。」 「そうなんだ。」 「ハナちゃんも、また髪整えにおいでよ?」 「仕事が落ち着いたら行こうかなぁ。」 「うん。 家でやってあげてもいいんだけど、いろいろそろってるから、店のほうがいいかなって。」 「あはは、人気の美容師さんに、家で無償でカットしてもらおうなんて思ってないよ!」 「また、そう言う…。」 「…手、触ってもいい?」 カズマは少し驚いた様子で、でもそっとペンを置くとゆっくり手を差し出した。 「指、細いよね。」 何気なく言ったけれど、触れたとたんに緊張してきた。 「ハナちゃんの指のほうが細いよ。」 「それは、男女の違いでしょ? 働いてる手って感じ。」 「そう?」 「うん。」 ありがとう、って手を離そうとしたところで、ぐいっと引き寄せられた。 「!?」 私は立っているけれど、カズマは座っているせいで、カズマの頭を胸に抱えることになっている。 「…ふふふ。」 「?」 「つむじが見える。」 「うん。」 「立ってたら絶対に見えないよね。」 「そりゃあ。」 オレのほうが背が高いからね、なんてつけ加えている。 「カズマが小さくなったみたいで、かわいい。」 「…。」 腰に回された手に力がこもり、ぎゅうっと抱きしめられる。 反射的に、優しく頭を包みこむ。 そうしていると、どうしてだろう。 守ってあげたい、そう思うのは、母性本能なんてやつのせいなのだろうか。 「手だけじゃなくて、全身全部、心もハナちゃんのものだよ?」 「えええ?」 驚いて、身体を離すけれど、離してくれない。
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