第11章

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「独り占めさせてくれるの?」 なーんて、ってごまかそうとしたのに、 「当たり前だよ。」 急に顔を上げるから、驚いてドキドキしてしまう。 「なんでそう言えちゃうの?」 「なんで、って。 そう思ってるから。」 「思ってても、なかなか言えないよ。」 「あ、あとは信じてるからかな?」 「信じてる?」 「うん。 ハナちゃんのことを。」 「えええ?なんで?」 相変わらず、プルプルでスベスベのお肌がうらやましいを通り越して、少し憎らしい。 「信じてない相手に、自分のことは委ねられないよ。」 「…。」 信じてくれているんだ、そう思ったらうれしかった。 だけど、だけど…。 視線が泳ぐ。 カズマをまっすぐに見れない。 「ハナちゃん、また困ってる。」 「だって。」 「ん?」 こういう時のカズマは、めちゃくちゃ優しい。 どうしてそんなにも? そう思うほどに、時間をくれる。 そして、私が話しやすいように、落ち着くように、待っていてくれる。 「私、ズルいよね。」 「どうしてそう思の?」 「カズマのことを、信じていないわけじゃないの。」 「ありがとう。」 「でも、私のこともカズマが独り占めしていいよー、なんて言えないの。」 「独り占めさせたくないから?」 困ったような笑顔を見せる。 「ちがうの! そうじゃなくて…。」 「ん?」 まん丸の瞳が揺れる。 キレイ。 吸い込まれてしまいそう。 もしくは、その瞳に惑わされて、普段は心にしまいこんでいる、本当の気持ちをホロリとこぼしてしまいそうになる。 「いらないかもしれないじゃない。」 吐き出すように、小さな声で言うのが精いっぱいだった。 「へ?」 カズマがキョトンとして、ジッと見つめてくるから、頬がどんどん熱くなる。 「だからぁ、いらないかもしれないじゃない? …私のこと。」 どんな拷問なんだろう。 恥ずかしすぎて、泣けてくる。
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