第11章

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「ハナちゃん、シャワー終わった?」 カズマが部屋から顔を出す。 「着替え忘れた。」 「着替えたら、髪乾かしてあげるからおいで?」 「ありがとう。 でもカズマ寝なくて大丈夫?」 「うん。さっきちょっとウトウトしたから。」 納得したわけじゃないけれど、ここで言い合うのも嫌でとりあえず部屋に入る。 キャミソールにパーカーを羽織って、ハーフパンツをはいてカズマの部屋へ向かう。 「ここ、おいで。」 座っているカズマの前に座る。 タオルで髪を拭かれていると、心地よさにウトウトしそう。 「ハナちゃん、寝ちゃってもいいよ?」 笑いをこらえながらカズマが言う。 「寝ないよ。」 「そ?」 タオルで拭き終わって、ドライヤーの温かい風に当てられると、もうダメだ。 首がカクンと落ちそうになる。 「背もたれあれば、寝ちゃっても大丈夫なんだけど。 もうちょっとだから、ごめんね。」 「ううん、起きてるよ。」 「ハナちゃん、だいぶ無理してるでしょ?」 「うーん、無理はするよ。 ほっといたら、小宮が全部抱え込むのわかってるから。」 「小宮さん、いい人だね。」 「根はいいんだろうけど、ホント意地悪っていうか…。」 「仲いいね。」 「腐れ縁なだけだよ。」 「ハナちゃんと対等で仕事ができるって、ちょっとうらやましいとか思っちゃった。」 「対等じゃないよ。 小宮は私よりずっと上の立場だから。」 「そうなの?」 「うん。 それに、カズマだってそうだよ。」 「え?オレ?」 「カズマはすごすぎて、もう届かないところにいるから。」 「そんなことないよ。」 「あるよ。」 カズマはドライヤーのスイッチを切った。 私の髪をなでる。 「ありがとう。」 「どういたしまして。」 ふわっと笑うと、コードをまとめてドライヤーを片づけている。
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