第11章

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「今日ハナちゃんの仕事終わったら、迎えにいってもいい?」 「大将のところは?」 「一緒に行こう?」 「うん。」 今日も忙しくなりそうだから、しっかり食べておかなきゃ。 そうそう、急に忙しくなって保留になっているけれど、レンさんにもそろそろ連絡しなきゃいけないな。 「ハナちゃん、近々休めそう?」 「どうかなぁ。 そろそろ小宮に無理やりでも休み取らされそうだけど、その分小宮が抱えるから。」 「そっかぁ。」 「うん。」 小宮が仕事ができるのはわかってる。 だけど、それが当たり前になると、小宮の仕事量が増える一方なことが気になっている。 それを小宮に伝えたら、お前のことだろうって返されたけど。 いつになっても、仕事に対しても器用にはなれそうにない。 プライベートのことだって、器用に立ち回れたことはないか。 「ごちそうさまでした。」 「そこまで一緒に行ってもいい?」 先に食べ終わっていたカズマが、食器を運びながら言う。 「いいけど…。」 「よかった。」 「カズマは休みなんだから、休まなきゃ?」 「ハナちゃんと一緒にいて、癒されてるから大丈夫。 もしかして、ちょっとウザいとか思った?」 「そんなこと思わないよ!」 ウザいなんて思われることはあっても、思うことなんてない。 思ったよりものんびりしてしまったせいで、慌てて家を出る。 戸締りをすると、カズマがそっと私の手を取る。 細くて長い指が絡まると、いつだってドキドキしてしまう。 一生慣れる気がしない。 「攫いたい…。」 「え?」 「なーんて、冗談。」 「なんかすごく不思議なの。」 「ん?」 「仕事が楽しいって思ってる。」 「あはは、いいことだね?」 「うん。 前よりずっと楽しくてびっくりしてる。」
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