第11章

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仕事は楽しいけれど、立場は今までで一番危ういかもしれない。 波風を立てずに、平穏に過ごすことがベストだと思っていたけれど、今は全く逆のことをしていると思う。 それでも、楽しいと思えてしまうのは、少しは自信が持てているからなのかもしれない。 「ハナちゃん、今日なに食べたい?」 「今日はお肉かなぁ。」 「お、珍しいね。 おいしいメニュー考えておくよ。」 「ありがとう。」 お店の手前で、カズマと別れる。 「いってらっしゃい。がんばって!」 「ありがとう。いってきます。」 手を振りながら、背を向けた。 お店まで歩きながら、心がスッと晴れていることも感じている。 好かれているかどうか、自信がなくて不安だった。 だけど、そうじゃないのかもしれない。 好かれているか、それよりも…。 「一華先輩、おはようございまぁす!」 後ろから、まみちゃんに声をかけられた。 「おはよう。」 「ラブラブ出勤ですか?」 「あはは、そうかも。」 「キャー!!! 一華先輩が!!!」 まみちゃんのが、両手で顔を覆っている。 「え??」 なにか変なことを言ってしまったかと、焦る。 「なになに? どうしたの?」 後輩がちらほらと集まってくる。 「一華先輩が、ノロケたー!!」 「え、ノロケてないって。」 苦笑いを返すけれど、 「だって、カズマさんのことが大好きって…。」 「いや、完全にそれは言ってないよね?」 「と、いうニュアンスの…。」 事実が捻じ曲げられる瞬間を目撃してしまったみたいで、ただ笑えてしまう。 「なになに? 一華先輩も、ノロケたりしちゃうんですか?」 「聞きたかったー!」 「いや、大げさだから。」 それほど騒ぐことでもないのに! 「だって、一華先輩ってクールじゃないですか。」 「…え?」
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