第11章

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「そうそう! うわさ話とか興味なくて、仕事はきっちりしてるし。」 「うんうん、慣れるまでは、無駄話したら怒られそうって思ってたぁ。」 「えー、めっちゃ優しいじゃないですか!」 「優しいんだけど、仕事にはきびしいっていうか。」 怖いと思われてるなんて、考えたことがなかった。 とはいえ、 「みんな好き放題言っちゃって…。」 私が聞いていてもいいのだろうか、なんて思ってしまう。 でもみんなお構いなしで、 「一華先輩が優しいって、もうわかってますもん。」 「そうそう、カズマさんとつき合ってから、余計優しいですよね?」 「幸せだからじゃないですかぁ?」 後輩たちとは、それなりにコミュニケーションが取れていると思っていた。 それも間違いじゃない。 だけど、本当に「それなり」程度だったのかもしれない。 もう少し踏み込むというか、私が心を開けばよかったんだ。 「ふふふ。」 「えええ? 余裕の微笑みですかぁ?」 「違うよ。」 「あ、幸せの微笑み?」 想像力がゆたかなんだなぁ。 「うれしいなぁって。」 「なにがですかぁ??」 不思議そうな表情でのぞきこまれる。 「え? ちょっとは仲良くなれたみたいで、うれしいの。」 「!?」 「あ、ごめんね。」 みんにそんなつもりはなかったのかもしれないと、少し焦ったところで、 「当たり前じゃないですかぁ!」 まみちゃんがはじけるような笑顔を向けてくれた。 「一華先輩みたいになりたいって、みんなの憧れですから!」 「ねー。」 「うん、うん。」 「…。」 思いもよらなかったのは、私の方だ…。 「仕事はもちろんだけど、お客様のことを悪く言わないし。」 「あ、私たちのことも、いつもしっかり指導してくれるじゃないですか!」 「…みんな。」 どうしよう、泣いてしまいそう。
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