第11章

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「一華先輩、不動産関係のお客さんが今日久しぶりに来てましたよ。」 帰りの支度をしていると、更衣室で後輩が言う。 「濱田さん?」 「あ、そうです。 一華先輩呼びますかって聞いたんですけど、また伺いますって。」 「そっか。」 また、姪っ子ちゃんにクッキーを買いにきてくれたのだろうか。 接客から離れているのに、事務作業では接客のデータとにらめっこしているから、不思議な気持ちになる。 「それじゃあ、お疲れさま。」 「お疲れさまです。」 店を出て、ベンチのところでカズマを見つける。 「ハナちゃん、お疲れさま。」 「迎えにきてくれてありがとう。 明日お休みしていいって。」 「そっか。よかったね。」 「うん。」 もし今日がお休みだったら、カズマとゆっくりできたのかなぁ。 なんて、欲張りなことを考えてしまう。 カズマの手が、私の手を掴む。 指が絡まる。 「どこか寄らない?」 「うん、いいよ。 カズマは今日なにしてたの?」 「掃除と洗濯と…。」 「ふふふ、お母さんみたい。」 「うん。 あと、勉強してた。」 「そうなの?」 「いろいろチャレンジしてみたいことがあって。」 「美容室で?」 「うん。 ハナちゃんは、あんまり美容室好きじゃない?」 怒るとか、批判するじゃなく、不思議そうに問いかけられた。 「好きじゃないというか、行き慣れないかなぁ。」 「美容室に来るきっかけが今までなかった感じ?」 「うん。 髪を伸ばしてることもあるけど、それほど回数通わないから。」 「そっかぁ。」 「あとは、おしゃれな人がたくさん通うイメージ?」 「そうなの?」 「うん。 たまに美容室へいくと、美容師さんと仲良さそうに話してる常連さんがいたりするでしょ?」 「あはは、そうだね。」 「なんか、すごいなぁって思って。」
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