第11章

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考え方や、感じ方はひとそれぞれでいいと思う。 それは自由なものだから。 そうだからこそ、気をつかうのかもしれない。 「顔なじみだから来てくれるお客様もいるし、そうじゃないけどそのことで躊躇する人ももちろんいるよね。」 「うん。」 「美容室も、親父のところも、ほとんどが顔なじみだったりするから、そこに慣れすぎてたかも。」 「いいことだと思うよ?」 「うん。 でも自分の当たり前が、相手にとっては理解できない場合もあるじゃん?」 「まあ、それはそうだよね。」 「店とお客って立場になったら、お客さんは好みじゃない店にはもう来てくれないよね。」 「うん、そうじゃない場合もあるかもしれないけど、基本はそう考えちゃうし、自分もそうするかも。」 「それはもったいないよね。」 「確かに。」 常連のお客さんももちろん大切にしたい。 だけど、それだけじゃお店は成り立たない。 「商店街自体にも、そういう雰囲気あるかもしれない。」 「…あ。」 確かに、ないとは言い難い。 何世代も続いているお店が、軒を並べていることはステキなことだけど、お客様が来てくれないことには、商売にならない。 「明日、レンさんのところへ行こうと思ってるの。」 お兄ちゃんからも返事が届いていた。 と、いうか時間の都合をつけて、大将のお店に訪れそうな予感がするのだけど。 「そういうことも含めて、話聞いてみようかな。」 「うん。」 カズマが急に足を止める。 「そこで、ハナちゃん。 今はどこへ寄ろうか?」 気づいたら、帰り道をまっしぐらに歩いていて、無意識とはいえちょっと笑える。 「ここまで来ちゃったからには、行くしかないんじゃない?」 「ほんと?いいの?」 「うん。全然オッケー。」
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