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「それも、すごく大切で大変なことだと思うの。
でも、それを乗り越えたから、今少し余裕が生まれたんじゃないかなぁ?」
「…。」
「別に、他の道に進むことだけが、道じゃないと私は思うよ?
きっかけは、いろいろあったとしても、続いているってことは、翔太が魚屋さんをがんばってる証拠で、結果でしょ?」
「…。」
「そこは、絶対に違わない。」
「…ありがと。」
「悩んで、甘えて、少し休憩して、また進めばいいんだよ。きっと。」
「…そっか。」
翔太が、ふわりと笑顔を見せた。
さっきとは違う、優しい表情にホッとする。
「でも、悩むのと根詰めるのは違うよ!
なにをするにしても、健康第一なんだから。
ちゃんと食べる!休む!だよ!」
「…はい。」
きっと、大将もそれを気にしていたんじゃないかなぁ。
だけど、もし大将が翔太を無理矢理休ませてしまったら、翔太は変に気にするかもしれないって心配していたのかもしれない。
「こんばんは。」
ガラガラと、引き戸が開いて、聞き覚えのある声が耳に届く。
「お、ハナちゃん奥にいるよ!」
大将の声。
「そうですか!」
と、近づいてくる足音と共に、
「一華!痩せたんじゃないのか!?」
「お兄ちゃん、静かにしてくれない?」
今度は私が苦笑いを向けるしかない。
無理矢理隣に座ろうとしたけれど、向かい側に座るように促して、カズマにビールを注文している。
「連絡遅くなってごめんなさい。」
「いいよ、いいよ。
仕事大変だったんだろう?」
「まぁ、多少。」
仕事内容というより、仕事量が増えて時間が取られてしまった。
もう少し効率よく、事務作業を進められたらいいのだけれど。
事務専業で仕事をしていたミユキに、今さらながら尊敬を…。
「ちゃんと休めてるのか?」
「うん。」
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