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すっかりお腹がいっぱいになって、そろそろ帰ろうかという頃に、翔太が
「片づけは俺やるから、カズマと帰りなよ?」
「でも…。」
ほら、いいから、と。
ほぼ無理矢理、カズマと外に出されてしまった。
だけど、翔太は楽しそうに笑っていたから、きっと大丈夫。
「…疲れた?」
「ううん、平気だよ?」
「じゃあ、少しだけ散歩して帰らない?」
「いいよ。」
差し出されたカズマの手に、自分の手を重ねる。
「翔太、なんか言ってた?」
「うん。
でもきっと大丈夫だよ。」
「そっか。
それなら良かった。」
「…心配してたんだ?」
カズマの顔をのぞきこむ。
「うん、まぁ…。」
「カズマも翔太も、優しいからなぁ。」
「そうかなぁ。」
「うん、優しい。」
「ハナちゃんも優しいよ?」
「だといいけど。」
「レンさんの手伝い、大丈夫そう?」
「うーん、わかんない。
ちょっとは不安だけど、楽しそうって思うよ。」
「前向き~。」
「…確かに、そうかもしれない。」
「うん?」
キュッと重なる手が、温かくてうれしい。
「変わらないことが、一番大事だと思ってた。」
「うん。」
「特別なことが起こらなくても、今を維持できることが一番いいって。」
「悪くないよ?」
「あはは、そうなんだけど。
それだけよりも、変わるものもあるから、面白いのかなって。」
「変わるもの…。」
「変わらずにいるって、きっと無理なことだよね?
だから、変化も楽しめたらいいなぁ。」
「…そうだね。」
カズマがこっちを向いて、笑う。
「私も少し、心にゆとりができたのかな?」
「へ?」
「ふふふ、なんでもないッ!」
カズマの手をぎゅーっと掴む。
不意に、ぐいっと引き寄せられて、カズマの腕の中に包まれてしまった。
「み、道端だよ?」
「え?
道じゃなかったらいいの?」
「そ、そうじゃなくて…。」
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