第11章

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本屋さんをながめていると、カズマから連絡が入った。 どうやら仕事が終わったらしい。 いつもより早いみたい。 本屋さんにいることを伝えたら、すぐに行くからって返事がきた。 カズマのことだから、ワープするみたいな速さで到着しそうだなぁ。 想像するだけで、ちょっと笑っちゃいそう。 「ハナちゃん、みっけ!」 「早っ!」 早いだろうとは思っていたけれど、早すぎて驚くしかない。 「え、遅いほうが良かった?」 「ううん。早すぎてびっくりしたの。」 「あはは、そっか。」 バッグからハンカチを取り出して、カズマの額に当てる。 「ありがと。」 「そんなに急がなくても大丈夫なのに。」 「オレが、早くハナちゃんに会いたかったの。」 「そ、それはありがとう。」 そういうこともサラッというんだから。 いつになったって、慣れないなぁ。 「さて、ご飯食べる?」 「そうだね。どこがいい?」 「あ、ハナちゃんまだそんなにお腹減ってない?」 「え。」 確かに、翔太と会った時にサンドイッチを食べたから、まだそれほどお腹は減っていない。 「どこか見る?」 「うーん。」 「待ってる間に回っちゃったか。」 「ははは。」 「じゃ、散歩しよ?」 カズマが私の手を取る。 指が絡まる。 何度くり返しても、ちっとも慣れないんだよなぁ。 「手つなぐと、ハナちゃんちょっとテレるよね。」 「そ、そんなことないけど。」 まるでおもしろいことを見つけたように、目を輝かせないで欲しい。 「かわいいけど?」 「だからー、そういう風に言われてもどうしていいのかわからないの!」 「そのままでいいけど?」 「困るのー!」 「あはは。」 笑ってるけど。 まあ、いいか。
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