第11章

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「ねぇ、カズマ夏祭りのこと考えてる?」 「考えてなくはないけど。」 「むずかしいよね。」 「そだね。」 「ねぇ、夏祭りが終わったら。」 「ん?」 カズマの手を、きゅっと掴みなおす。 気づかないふりをしてと、願ってしまう。 「旅行しようね。」 顔なんて見れなくて、そう伝えるのが精一杯だ。 なのに。 キュッと、手にちからがこもる。 手のひらから、ドキドキが伝わってしまうかもしれない。 …気持ちが全部、伝わってしまえばいいのに。 「うん。」 珍しく、カズマが照れていて、可愛いって思ってしまう。 うん、やっぱり年下だね、なんて。 都合よく思いたくなる。 「ねぇ、なーんにもしないでさ。」 「うん。」 「ただ、ずっと、ふたりでいたい。」 「…うん。」 素直に気持ちを伝えられるのは、私が成長したから? それとも、カズマが優しいから? きっと、カズマならすべて受け止めてくれるって、信じられるからかもしれない。 「カズマ。」 「ん?」 「すき。」 「!??」 カズマが、目を真ん丸にして、私を見てる。 「今までも、これからも、ずっとすき。」 「…ハナちゃ…」 「だから、ずっとそばにいて?」 カズマの手が、ゆっくり伸びてきて私の頬を包む。 指が絡まったままの反対の手はそのままで、真っ直ぐにカズマを見つめる。 「すき。だいすき。」 「…オレも。」 耳元で、カズマの声が響く。 低くて、甘い声に背筋がゾクリとする。 「ハナちゃん、愛してる。」 そう囁いて、優しく唇が重なった。 先のことなんて、わからない。 でも。 カズマがいてくれたら、がんばれる。 一緒にいられたら、乗り越えられないこと何てないって、思える。 だから、きっと。 これからもずっと。 幸せだって思うんだ。
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